(※画像はイメージです/PIXTA)

トヨタ自動車が、EV(電気自動車)の設計・生産の体制の根本的な見直しに乗り出したことが明らかになりました。世界中でEVが急速に普及するなか、遅れを取り戻すため、EVを量産する体制を整えるねらいがあります。しかし、わが国の自動車税制や過去の政府要人の発言を顧みると、多難な前途が予想されます。本記事では、現行の自動車関連税制の問題点等について解説します。

◆自動車税・軽自動車税

次に、自動車税・軽自動車税に関する問題です。

 

自動車税・軽自動車税は1950年に導入された当初、「ぜいたく税」の性格をもつものと扱われていました。

 

しかし、その後、自動車は一般国民に広く普及しました。今日では、特に、公共交通機関が発達していない地方においては、日常生活を送るうえで必要不可欠です。

 

ところが、自動車税・軽自動車税の負担は依然として重いままです。たとえば、JAFが2022年10月に公表した「2023年度自動車税制改正に関する要望書」のなかで、日本の自動車税・自動車重量税を合わせた税負担が、欧米諸国(イギリス、ドイツ、フランス、アメリカ)と比べ約2.2~31倍にのぼると指摘されているのです。

 

自動車税の元来の制度趣旨から考えると、既にぜいたく品でなくなった自動車に対して高い税金を課するのはおかしいということになります。

 

さらに、先述した自動車重量税と同じように、新規登録から13年経過すると税率が高くなるという問題があります。もし、「ぜいたく税」と考えるのであれば、新車を乗り換える経済的余裕がある人ほど課税を強化すべきです。また、中古車ほど税率を低くしてあげなければならないはずです。

 

しかも、2019年10月に行われた「自動車税の恒久減税」は、同年月以降に新車新規登録を受けた車両のみが対象です。

 

このように、現行の自動車関連税制は問題が多く、税負担も過大であり、それが「クルマ離れ」に拍車をかけているとの指摘もあります。トヨタをはじめとする自動車メーカーが懸命にEVの生産体制の整備につとめても、現行の複雑怪奇ともいえる自動車税制が、その普及の足を引っ張りかねないというリスクがあります。

EVについては「走行距離課税」の問題も

なお、EVについては、いわゆる「走行距離課税」が導入されるのではないかという問題もあります。走行距離課税とは、走行した距離に応じて課税するというものです。

 

この問題の発端は、鈴木俊一財務大臣が2022年10月20日の参議院予算委員会でEVの「走行距離課税」導入の可能性に言及したことです。その理由は以下の2つです。

 

・EVにはガソリン税のような燃料に対する課税がない

・EVは車体が重いため、道路の維持補修の負担が増大する

 

しかし、「道路の維持補修の負担」をいうならば、道路特定財源を廃止して自動車重量税とガソリン税を一般財源に組み込んだのは何だったのかということになります。

 

また、自動車重量税の存在意義を依然として認めるならば、それと存在意義が同じ税金をもう一つ設けることになるという「二重課税」の問題があります。

 

さらに、EVに走行距離課税を適用した場合、ガソリン車にも適用するかどうかという問題も発生します。

 

岸田首相は現状、「走行距離課税」について否定的な考えを示しています。しかし、道路特定財源を一般財源に組み入れた経緯や、「当分の間税率」が続いている経緯等を考慮すると、いずれはEVについて走行距離課税が導入されるのではないかという危惧を拭い去ることはできません。

 

ここまでみてきたように、現行の自動車税制は様々な問題を抱えており、それが、自動車メーカーないしは国民の側でのEV推進の動きの足かせになる危険性さえ秘めているといえます。

 

もはや現行の自動車税制を維持することは困難であるといわざるをえません。政府・国会には、可及的速やかに、すべての国民・自動車ユーザーにとって納得感のある税制を構築し直すことが求められます。

 

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