必要なたんぱく質を食品から摂るとカロリーオーバー
■タンパク質という教養
実はここまで、きちんとした栄養学的なことやタンパク質が体に取り込まれてからの働きなどについてはほとんど述べていない。言葉の定義もかなりあやふやなまま書き進めてもいる。専門家ではないからという言い訳もあるが、専門的な話は専門書を読んだ方が間違いなくしかも面白い(ここでいう専門書は筋トレの本という意味ではなく、医師や科学者が一般読者向けに書いた書籍という意味だ)。
そのなかで、こんな表現を読んで感動してしまった。
「私たちの身体を作っているタンパク質はおおよそ10万種類ほどもあり、1個の細胞のなかには80億個ほどのタンパク質が働いている。1個の細胞あたり、1秒間に数万個も作られているのがタンパク質である。特定のタンパク質に限っても、赤血球のなかにあって、酸素を運ぶのに大切なヘモグロビンは、全身で1秒間に1000兆個ほどが作られるとされている。
とんでもない量である。なんとも気が遠くなるような話であるが、これだけのタンパク質を作り続けるために、アミノ酸が常に必要であり、そのために肉をはじめとするタンパク質食品を摂らねばならない」(『知の体力』永田和宏著 新潮新書)
まるでアニメの『働く細胞』ではないか。どんな筋トレ本より的確で正確になおかつ感動的にタンパク質の必要を説明してくれている。
筋トレをきっかけにもう少し体のことを勉強したいなら、お手軽なハウツー本ではなくきちんとした本をおすすめしたい。同じ著者の『生命の内と外』(新潮選書)とか『タンパク質の一生』(岩波新書)も読み物として面白かった(ただし、決してわかりやすいとか素人でも簡単に理解できるという意味での面白さではない。単語に馴染みがないから油断するとすぐに文脈がわからなくなる)。
著者の永田和宏先生は日本を代表する細胞生物学者でタンパク質の第一人者で……ということは、実は筋トレを始めるまではまったく知らなかった。
何か新しいことを始めたときに、思いがけない場所で思いがけない名前に出くわすと嬉しくなる、と本連載のコラムでも書いた。さながら旅行先で旧知の友と出会ったような気分だ。これはやや脇道の話。
■なぜプロテインが必要か
言葉の定義があやふやと言ったが、プロテインという言葉も単にタンパク質という意味で使ったり、サプリとしての粉末プロテインという意味で使ったりと、厳密な使い分けはしてこなかった。これから述べるプロテインは食事から摂るタンパク質ではなく、サプリとしてのプロテインの意味だ。
そもそもなぜプロテインが必要なのか。1日に必要なタンパク量を食品からだけ摂ると、どうしても脂肪も同時に摂取して、この合計カロリーが意外にバカにならないのだ。たとえば完全栄養食といわれる卵だ。茹で卵にするとタンパク質7.7gに対しカロリーは91kcal、脂質は6gある。これは意外に大きな量を占める。
EPA、DHAで人気の青魚はどうか。サバ水煮缶でみるとカロリーが322kcalに対し、タンパク質は26.4g、脂質は24gもある。皮なし鶏胸肉なら同じ程度のタンパク質を摂るのに脂質は2g以下だ。そして粉末プロテインなら脂質はほぼゼロである。
あくまでタンパク質摂取ということだけに限ると、食事だけで必要なタンパク量を摂りつつ脂肪を抑えるのは、かなりメニューが限られてきてしまう。少し昔のコンテストビルダーが「ビタミンとミネラルはブロッコリーで、炭水化物と食物繊維はサツマイモと白米(ないし玄米)、タンパク質は鶏胸肉とプロテインで摂る」というのも、栄養バランスとしてはある種、理想の最終形ということになる。
ま、還暦過ぎるとここまでストイックになりきれないが。そもそも「もっと美味しく食べたい」などと普通に思ってしまうところが、もうひと絞り減量ができない理由だと、自分でもわかっている。
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