(※写真はイメージです/PIXTA)

老舗和菓子屋の3代目である68歳のF社長は、37歳の長男・K氏に4代目を任せようと考えていました。K氏の入社から5年経ち、事業承継の準備が整ったと考えたF社長。会社の顧問税理士と取引銀行の担当者、自社の工場長に「4代目をKに任せようと思う」と話を切り出すと、全員がまさかの反対! いったいなぜか……牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、過去に受けた相談事例をもとに事業承継の落とし穴について解説します。

認識不足のまま先走り「猛反対」を受けたF社長の対応

今後のことは、F社長とK専務それに顧問税理士を交えて、事業を承継する準備をしていくことになりました。

 

すると、顧問税理士から「解決すべき課題」として、下記3点の対応方法について説明がありました。

 

①自社株の譲渡(※1)

②借入金の連帯保証人(経営者保証)(※2)

③新社長就任後の事業・資金計画の策定

 

(※1)自社株の譲渡:非上場の株式等の承継に伴う贈与税・相続税の負担軽減措置として、「法人版事業承継税制(一般措置)」や、2024年3月までに特例事業承継計画を提出し、2027年までに事業承継を実施することが必要な、非上場の株式等の承継に伴う贈与税・相続税の負担を実質ゼロとする特例措置「法人版事業承継税制(特例措置)」といった制度。事業承継に係る他の支援施策を利用して、自社株譲渡の負担軽減を図ることが必要。ただし、一般的には、制度を利用するには専門家の専門知識も重視する。

〈参考〉『財務サポート「事業承継」』(中小企業庁HP)

(※2)借入金の連帯保証人(経営者保証):F庵の取引銀行に、現在、法人として返済の能力のあるF庵の債務を、経営者のF社長が個人として連帯保証人(経営者保証)になっている。このF社長の債務の連帯保証人を社長退任後は解除して、K専務にすることを認めること。または「経営者保証に関するガイドライン」に沿うような措置で対応するように交渉したいと、F顧問税理士とK専務は考え、そのための手続きの準備を始めた。

<参考〉「経営者保証」(中小企業庁HP)/「事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則」((一社)日本銀行協会HP)

 

F社長は話を聞いて、何も準備していなかったことはわかりましたが、詳細は理解できませんでした。そこで、大学で経営学を専攻したK専務に尋ねながら理解を深めたそうです。

 

顧問税理士の話では、ほかに解決しなくてならない課題もあり、K新社長が誕生まで2、3年は必要とのことです。

 

K専務は、これから何をすべきか明確になり、F社長共々その準備に取り掛かり始めました。

 

そして、会社の課題解決をするのに、F社長、K専務の家計の見直しも必要になり、筆者のところを訪れたのでした。

 

 

牧野 寿和

牧野FP事務所合同会社

代表社員

 

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