(※写真はイメージです/PIXTA)

老舗和菓子屋の3代目である68歳のF社長は、37歳の長男・K氏に4代目を任せようと考えていました。K氏の入社から5年経ち、事業承継の準備が整ったと考えたF社長。会社の顧問税理士と取引銀行の担当者、自社の工場長に「4代目をKに任せようと思う」と話を切り出すと、全員がまさかの反対! いったいなぜか……牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、過去に受けた相談事例をもとに事業承継の落とし穴について解説します。

「Kもそろそろ…」F社長の思いちがい

F社長は、K専務が会社にも慣れて、事業を承継する準備も整ったと思い込みました。そして、会社の顧問税理士と取引先の銀行の担当者、それに古参のG工場長に、「来期から、K専務を代表権のある社長にして、自分たち夫婦は退任する」と告げました。

 

すると、3人はともに、F社長の意にそぐわない話を始めたのです。

 

顧問税理士の話

「F社長が先代から事業を引き継いだ時は、個人事業でしたので税務署や保健所などに届けを出すといった準備でよかったです。しかし、現在は株式会社、法人です。ですから経営者が変わるには、準備に時間がかかります。

 

また、準備のしかたを誤ると、莫大な費用が発生しかねません。今はまだ何も準備はできてはいません。だから、来期からは無理です。」

 

取引銀行の担当者の話

「F社長は現在、貴社の当行への負債の連帯保証人になってもらってますが、退任後も引き続きお願いします。K専務は、現在当行に毎月住宅ローンの返済していただいています。

 

また、K専務の資産額やキャリアで、貴社の連帯保証人を引き継いでもらうのは心もとないです。」

 

古参の職人、工場長のGさん

「社長には申し訳ないが、K君が社長になるなら俺は暇をもらうよ。饅頭ひとつ満足に作れないのに、何がドイツ菓子との融合だ……」

想像と違った3人の反応に戸惑うF社長

F社長は親が自分にしてくれたように、退任後もしばらくは、息子の面倒は見るつもりでした。しかし、誰からも、大変辛らつな言葉に、F社長の頭の中が真っ白になったといいます。

 

F社長にとって、3人の反応はにわかに信じがたいことで、また顧問税理士の言葉ではないですが、自分が先代から事業を引き継いだ時のように、息子にも容易に事業が引継げると思い込んでいたのでした。

 

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