(※写真はイメージです/PIXTA)

老舗和菓子屋の3代目である68歳のF社長は、37歳の長男・K氏に4代目を任せようと考えていました。K氏の入社から5年経ち、事業承継の準備が整ったと考えたF社長。会社の顧問税理士と取引銀行の担当者、自社の工場長に「4代目をKに任せようと思う」と話を切り出すと、全員がまさかの反対! いったいなぜか……牧野FP事務所の牧野寿和CFPが、過去に受けた相談事例をもとに事業承継の落とし穴について解説します。

わが子に継がせるために…F社長なりの準備

和菓子屋F庵、3代目F社長と4代目K専務のプロフィール

F庵は、その地方では名の通った和菓子屋です。F社長は、会社の大部分の株式と夫婦で住んでいる自宅の土地建物、それに現在K専務家族が住んでいる敷地を所有しています。また、K専務の住宅購入には、F庵の取引先銀行で融資を受け、現在住宅ローンを返済しています。

 

F庵は、10年前に個人経営から法人化しました。その時の手続きは、顧問税理士とその知り合いの士業がしてくれました。

 

会社の主な資産は、自宅に隣接した、菓子製造工場と事務所の土地建物と設備。それに商品輸送用の軽貨物車3台です。

 

現在F庵には、F社長の先代から菓子職人として働いているG工場長74歳と数名の職人それに4人の事務員が在籍しています。また、パートの販売担当や繁忙期には応援のバイトも雇っています。F夫人は経理担当の役員を務めています。商品は、工場隣接の売店や百貨店内の店舗で販売し、またお茶会などの会場に届けています。

 

F家の長男であるK専務は、F庵の4代目を継ぐことを高校生のころには親子で決めていました。経営的なセンスを学ぶため、大学では経営学を専攻し、また大学卒業後は「F庵に新風を取り入れたい」との思いから5年間ドイツに渡り、現地の菓子作りを学びました。帰国後は、F社長知りあいの和菓子店にいわゆる「丁稚奉公」に出ていました。

 

そして、いきなり専務取締役としてF庵株式会社に入社して5年経ったのです。入社の年に結婚もしています。

 

入社後は、F庵伝統の和菓子の製造販売、会社の経理などを両親やG工場長、社員から教えてもらいました。

 

最近では、販売ルートを拡充するため、ネット通販など試み始め、またオリジナルの和菓子やドイツ菓子を考案して、販売するようにもなっています。

 

F社長はそのようなK専務の姿を頼もしく感じていました。

 

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