「M資金信者タイプ」だった蔵人会長
そしてコロワイドの蔵人会長は、まさにこのM資金信者タイプで、今回の事件の数年前にもM資金詐欺師から「資金の提供を受けられるかどうかの選考がありますから、そのエントリーフィーを支払ってください」と言われ、数千万円単位の選考料を支払っていた。
その後、詐欺師たちは作戦通り蔵人会長に対して「いいところまではいきましたが選考審査に落ちました。残念でした」と説明して、もらった金をまんまと持ち逃げしたのだった。
この時は、蔵人会長が『選考落ち』を信じ込んだことから被害届が出されることはなかった。
そして、この時の詐欺行為に今回のコロワイド事件の主犯格と目される武藤が関わっていたのだった。蔵人会長がM資金信者であることを熟知していた武藤は、XとYが蔵人会長に接触したのを知り、XとYに対して、その後のやり取りの指南をしたと言われている。つまり、XとYに対してダマし方を伝授したのだった。
蔵人会長はXとYから基幹産業育成基金の説明を受けて「前回(数年前の時)はここまでの話はなかったのに、今回はこんなに、しかも、イギリスの機関まで動いた。やっとここまで辿り着けた」と、さらに深くM資金トレジャーハンター的心理状態にはまってしまった。
そしてXとYは武藤の指南通り、蔵人会長が2,800億円のM資金を受け取るに相応しい人物であるかどうかの『調査費』や『審査のエントリーフィー』を要求し、会長は1億3,000万円(マスコミ報道)を一般社団法人アジア経済協力会議所に振り込んでしまったのである。
XとYは蔵人会長からの信頼をさらに得るため、基幹産業育成基金の会が発行しているというメンバーズカードを会長に渡した。もちろん、そんな会もなければメンバーズカードも勝手に作成したものだった。
その後も、蔵人会長はXとYに指示されるがままに『追加調査費』や『交渉費用』、秘密資金であることから表立って銀行に貯金できない2,800億円のM資金を保管するための『倉庫費用』などの名目で、2017年9月~2018年12月までの間に計10回も現金を渡してしまった。
その総額はなんと約31億円以上にものぼった。XとYは、毎回トラックに乗せてこの現金を隠し場所に運び保管したそうである。
とてつもない大金だが、蔵人会長からしてみれば高齢の身であり、自分が生きているうちに何十年間も追い続けたM資金物語を肌身で実感できたうえに、800億円もの莫大な資金が手に入ると思うと、躊躇することはなかっただろう。
長年の願いが叶う一世一代の投資だと思えば、およそ31億円以上という金額も夢の実現のための必要経費という認識だったのかもしれない。
蔵人会長でなくとも、M資金トレジャーハンターであれば「こんな幸運なことはない。自分こそ、この幸運を授かるに値する、選ばれた人間なんだ」と高揚感に胸を躍らせてしまうだろう。
藤原 良
作家、ライター
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