時の権力者すら手玉に…「M資金」で日本経済界の重鎮たちを狂わせた“稀代の女詐欺師”驚きの手口

時の権力者すら手玉に…「M資金」で日本経済界の重鎮たちを狂わせた“稀代の女詐欺師”驚きの手口
(※写真はイメージです/PIXTA)

第二次世界大戦下、敗戦濃厚と判断した旧日本軍の一部が、連合国に押収されるのを嫌って極秘に保管したといわれる「M資金」。陰謀論とさえいわれるこの巨額の財産を巡り、戦後から現在にかけて多くの詐欺事件が発生しています。本記事ではライターの藤原良氏が、「M資金」をエサに荒稼ぎした女詐欺師たちの手口と、その女詐欺師に騙された権力者の顛末を紹介します。

『M』に魅入られた女詐欺師たち

1980年代になると、稀代の女詐欺師と呼ばれた青柳ハツを主犯格とする詐欺グループによる変形型M資金の詐欺が相次いだ。同様の手口で樋口千尋なる女詐欺師も暗躍した。

 

青柳ハツは総理大臣や蔵相(財務大臣)の偽造印や偽造公文書を用いて「自分には莫大な還付金とその利息をもらう権利があるが、当座の資金が不足しているので援助して欲しい」という口上で数千万円単位の詐欺被害を続出させた。

 

これのどこがM資金詐欺なのか? と思われるだろうが、当時の日本経済新聞にてありもしない大金の存在をチラつかせて詐欺を働く手口がM資金詐欺に類似しているとしてM資金詐欺という表現を用いて報道され、現在でもM資金詐欺の変形として認識されるようになっている。

 

1990年代に入ると、70年代のストレートなM資金詐欺と80年代の変形を混ぜたような詐欺がM資金詐欺事件として複数発生した。

 

1994年には、当時の日産自動車株式会社の藤井大至副社長がM資金詐欺に関わったとして辞任に追い込まれている。

 

2000年代に入っても、同様の変形類似型の詐欺が続いた。さらに天野光子や堂山トシ枝などの新顔の女詐欺師や、天皇家の親戚を名乗る者までもが現れて、犯人たちのバラエティーの豊さが注目された。

 

ありもしない大金話を用いて、詐欺を働くM資金詐欺および変形類似型の事件では前述の青柳ハツ、天野光子、堂山トシ枝といった女詐欺師たちが主だった。

 

1980年以降の詐欺事件における男女別検挙人数の比率の目安は男性が60%以上であり、調査年によっては80%を占めるのに対して、女性は常に20%以下(法務省法務総合研究所発表)であり、詐欺は男だらけの世界とも言われたが、M資金関連については女詐欺師たちが多く登場する。

 

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※本連載は、藤原良氏の著書『M資金 欲望の地下資産』(太田出版)から一部を抜粋し、再編集したものです。

M資金 欲望の地下資産

M資金 欲望の地下資産

藤原 良

太田出版

「私達のM資金は本物です」 「やっぱりあれはあったんですね……」 昭和から次々と大企業経営者たちが飲み込まれてきた「M資金詐欺」。 令和にもなお黒く輝き続ける“幻”の正体を追う。

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