1人で31億円以上払った被害者も…荒唐無稽な「M資金詐欺」富裕層・エリートほど引っかかるワケ

1人で31億円以上払った被害者も…荒唐無稽な「M資金詐欺」富裕層・エリートほど引っかかるワケ
(※写真はイメージです/PIXTA)

詐欺業界ではM資金話を信じ込んでいる人間のことを、新興宗教の信者になぞらえて『M資金信者』『M資金狂い』と呼んでいるといいます。詐欺グループから31億円以上もの大金を騙し取られた、外食産業大手『コロワイドグループ』会長の蔵人金男氏もそのひとりでした。蔵人氏をはじめとした『M資金信者』『M資金狂い』たちの悲惨な末路について、ライターの藤原良氏が解説します。

※M資金とは……第二次世界大戦下、敗戦濃厚と判断した旧日本軍の一部が、連合国に押収されるのを嫌って極秘に保管したといわれる「隠し財産」のこと

詐欺師から都合よく利用される「M資金信者」たち

蔵人会長はこの数年前にもM資金詐欺の被害にあっていたために、M資金詐欺師たちの間では『M資金信者の典型』だと噂されていた。

 

誰が何をどのように信じるかはその人の自由だが、詐欺業界ではM資金話を信じ込んでいる人間のことを、新興宗教の信者になぞらえて『M資金信者』『M資金狂い』と呼んでいる。そして、M資金信者は2種類に大別される。

 

ひとつめは『M資金の存在を本気で信じ込み、M資金をその目で見たいがために積極的に活動し、M資金詐欺を展開する詐欺師たちに指示されるがままに動かされ、結果的に自ら詐欺師の作ったM資金話を拡散するブローカーに成り果て、積極的にM資金詐欺師たちと関わり、詐欺行為を助長してしまうタイプ』だ。

 

彼らはM資金の金が目的ではなく、その存在を確認することが目的であるため、詐欺師が客から騙し取った金を受け取ることも考えず、詐欺師たちに都合よく利用されている人間たちだ。

 

このタイプには大手企業幹部、元警察幹部、元自衛隊幹部、元官僚、議員秘書など、高齢者で社会的信用を持つ顔ぶれが目立ち、決して金に困っているタイプではない。そんな彼らは、豊富な人脈の中でM資金詐欺師と知り合い、その話を信じ込んだあげくM資金詐欺師に対して悪気なく次々と被害者になりうる人物を紹介してしまうのである。

 

M資金が発動(融資完了)された際、彼らには紹介料名目で一定の手数料が渡される約束を詐欺師から約束されているのだが、彼らの本音は金を稼ぐことよりもM資金の存在を確かめることにある。

 

大物が“ハマってしまう”ワケ

元警察幹部や元幹部自衛官までもがどうして? と疑問に思われるだろうが、徳川幕府の隠し財宝と言われる徳川埋蔵金であったり、豊臣家の豊臣埋蔵金であったり、バルチック艦隊の金塊が眠る沈没船の財宝伝説など、この世には埋蔵金伝説や秘宝伝説がいくつもあり、それを信じて何十年も調査を継続している人たちがいるのはご存じだろう。

 

1980年代には、日本船舶振興会会長の笹川良一もバルチック艦隊の金塊探しに情熱を傾けたぐらいである。ちなみにバルチック艦隊の金塊探しでは、対馬沖と鬱陵島付近の海底からプラチナなどのインゴットが発見され、その所有権を巡ってソビエト連邦(現:ロシア)を巻き込んで国際的な政治問題に発展したほどだった。

 

たとえ社会的信用がある人物であっても、世界各国に眠る財宝を探し求めるトレジャーハンターのようにM資金を『実在する財宝』と信じ、追い続けている者が確実に存在する。

 

よってM資金詐欺師グループの一員と化して詐欺に加担していることはあくまでも結果論であり、自分たちは『純粋なM資金トレジャーハンター』であり、犯罪目的ではなく純粋な冒険家のような存在だと信じ込んでいるのだ。

 

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※本連載は、藤原良氏の著書『M資金 欲望の地下資産』(太田出版)から一部を抜粋し、再編集したものです。

M資金 欲望の地下資産

M資金 欲望の地下資産

藤原 良

太田出版

「私達のM資金は本物です」 「やっぱりあれはあったんですね……」 昭和から次々と大企業経営者たちが飲み込まれてきた「M資金詐欺」。 令和にもなお黒く輝き続ける“幻”の正体を追う。

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