詐欺業界のセオリー…『ウソは壮大に』
詐欺業界では『ウソは壮大に』というセオリーがある。小さなウソは見抜かれてしまうが、大きなウソをつくと客(被害者)を思考停止にさせるだけでなく、客の欲望を最大限に引き出す力を発揮するのだという。
客はウソが大きければ大きいほど「正面切ってこんなウソをつく人がいるわけがない」とそれ以上疑うことをやめ思考停止し、そして「さらなる成功のチャンスが訪れた」と自分で己の欲望、成功欲、自尊心を刺激する自己暗示をかけてしまい「これが仮にウソであったとしても、ここで何もせずに死んだら一生悔いが残る」「ウソだったとしても、もう前に進むしかない」と勝手に思い詰める。
こうして、そのまま詐欺師の懐に飛び込んでしまうのである。
心理学的にはこれらの状況を、自分のことを凄い人間だと思い込む「アバブ・アベレージ効果」や自分にとって都合のいい情報だけを取り入れる「確証バイアス」と呼ぶそうだが、詐欺師たちの多くは決して心理学を学んだわけではなく、実際の詐欺現場で真実がバレれば詐欺罪で逮捕されるというリスクを感じながら、客とのやりとりを繰り返すうちに、毛穴で吸収した経験値を次なるダマシ(シゴト)に活かしているのだ。
『コロワイドグループ会長』蔵人氏を騙したXとY
XとYは詐欺師のセオリーを忠実に実行した。蔵人会長に対して「大口の融資先としてあなたが選ばれるかもしれない。私たちはあなたのことを推薦したい」と話し、会長が自分たちの懐に飛び込んでくるように画策した。
その融資金額は2,800億円。こんな破格の融資は財閥系の大手銀行でもありえない。まさに『ウソは壮大に』だ。
大口融資先として選ばれるかもしれないということは、蔵人会長からすれば一切損がない話である。
もしこれが「あげます」や「私たちに寄越せ」という話であれば耳を貸すことはなかっただろうが、これまでコロワイドグループをより巨大な企業体へと成長させるべく、積極的に企業買収を繰り返していた蔵人会長にとって、今回の話は自分の企業運営の実績が評価されたため、この融資の『推薦』を受けられるのだと確信したのだろう。
自らは損をしないと判断すれば、彼らと直接会って融資話を確認して自分の目で見極めたいと思うに至ったことは、不思議ではないだろう。
外食産業大手のコロワイドグループ(2019年度売上高・約2,400億円、利益・約27億円)とはいえ銀行から一度に2,800億円もの巨額な融資金を引き出すのは難しく、もし本当にそれだけの融資を受けられるのであれば、さらなる企業成長を見込める有り難い話であった。
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