愚の骨頂…問題を塗り重ねていく「日本の農地」の実態
そんな状況下で、元々の農地であった土地が農地として活用されていない“不耕作農地”が溢れている。その面積は、埼玉県の面積とほぼ同じとの事である。
日本の自給率が低い状況下で、埼玉県の面積分の農地が何も作られずに放置されていると云う事は、大変異常な事である。
戦後の農地改革の弊害や、現在の農地法等の問題により不耕作農地が増え続けているが、最近顕著化してきた新たな問題点として、不耕作農地や山林がソーラーパネルの設置場所として転用されている事である。
食料が足りないのに、そして二酸化炭素を吸収して酸素に換えてくれる農地や山林を切り開いてソーラーパネルを設置する事は、誠に愚の骨頂である。その結果、景観が損なわれるだけでなく、水害等の新たな社会的問題を発生させてしまっている。これも行政の怠慢である。
また最近は再生可能エネルギーへの転換が叫ばれており、ソーラーパネルの設置はSDGsの一つの目標には対応している様に見えるが、環境破壊に繋がるため、他のSDGsの目標には相反している。全く愚かな事で話である。
仮に不耕作農地を全部農地として耕作したとしても、日本の自給率が100%になる訳ではないが、その効果は十分である。農林水産省の平成2年度の統計データによると、日本の耕作面積は437万ha 有る。
そして埼玉県の面積は3797㎢でヘクタール計算では約38万ha有り、日本全体の耕作面積の8.7%に相当する。単純な計算では、埼玉県の面積分の農地が耕作されれば、自給率が8.7ポイント改善する事になる。
これは決して小さな改善ではなく、かなり大きな改善である。
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松本 繁治
ルイジアナ州立大学工学部卒、同大学大学院中退。
日米の製造メーカに勤務後、外資系IT企業や外資系コンサルティング企業にてコンサルタントとして10年以上の活動を行う。一時期、家業である製造メーカで経営を支援。
2009年以降は独立してコンサルティング活動を継続中。