(※写真はイメージです/PIXTA)

NY州弁護士・秋山武夫氏の著書『司法の国際化と日本』より一部を抜粋・再編集し、「司法の国際化」について見ていきます。

日本人の、日本での行為が、米国の法律で裁かれる⁉

「一国の法律はその国の領土内においてのみ適用され、その効力は外国には及ばない」

 

これは「属地主義」と呼ばれ、世界中どの国でも、司法の常識として受け入れられてきました。各国には独自の文化や慣習があり、法律はそれに沿って作られてきたからです。

 

しかし昨今、この「属地主義」の概念を大幅に変えてしまう国が現れました。米国です。

 

米国の法律は本来ならば、米国内に居住していたり、米国で活動する人や企業(米国人はもちろん外国人や外国企業)にのみ適用されるはずです。ところが米国“外”で活動する米国“以外”の人や企業にも用いられることが起こるようになったのです。

 

日本企業や日本人に対しても例外ではありません。

 

日本の企業で専ら国内の仕事に従事していた会社員が、ある日突然、米国の法律に違反したと嫌疑をかけられる。日本の裁判所経由で米国の司法当局に出頭しろと命じられ、高額な罰金を科せられたり、刑務所に収監されたり……。現実にそんな事態が日本人や日本企業に起きています。

 

2010年代、日本の名だたる企業約30社とその幹部社員60人が米国司法省により次々と摘発されました。カルテルを結んだとして罰金を課せられただけでなく、約30人の日本人が米国の刑務所に収監されました。

 

被告の日本企業は自動車部品のメーカーで、納入先は日本の自動車メーカーです。米国とは何の関係もないように思えます。

 

しかし、カルテルによって価格操作された部品を搭載した完成車が米国に輸出され、結果的に米国の消費者が高い値段で完成車を買わされました。カルテルが米国内で行われていたならば明らかに法律違反です。

 

それを海外での外国企業の行為(この場合、日本での日本企業の行為)にも適用させたのです。

 

2012年には、日本の商社がナイジェリアで行った贈賄が、米国のFCPA(海外腐敗行為防止法)違反として、8800万ドル(約114億円、ドル対円の換算率を便宜的に1ドル130円で計算しました、あくまでおおよその数字です)の罰金が課せられた事例もあります。

 

舞台はナイジェリア、贈賄したのは日本企業。

 

これまた米国とは無関係に見えますが、贈賄を仲介した人物と米国内で打ち合わせたことなどが米国と関係ありとされ、米国の司法当局が乗り出しました。ある国の法律を、その領土外で活動する外国人や外国企業に用いることを「域外適用」といいます。

 

かつて司法の常識であった「属地主義」とは明らかに異なる動きですが、現在はこれがどんどん加速し、米国以外の国でも行われるようになっています。なぜこのようなことが起こるのでしょうか? 他国は「主権侵害」と抗議しないのでしょうか?

次ページなぜこのようなことが起こるのか?「背景にあるもの」

※本記事は幻冬舎ゴールドライフオンラインの連載の書籍『司法の国際化と日本』(幻冬舎MC)より一部を抜粋したものです。最新の法令等には対応していない場合がございますので、あらかじめご了承ください。

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