旧日本軍の“隠し財産”に翻弄された権力者たち…元政治家「融資額は3,000億円」を信じた全日空・社長の悲惨な末路

旧日本軍の“隠し財産”に翻弄された権力者たち…元政治家「融資額は3,000億円」を信じた全日空・社長の悲惨な末路
(※写真はイメージです/PIXTA)

昭和30年代。戦後の復興に沸く日本の裏で、詐欺師たちは「どうすれば金をふんだくれるか?」と金脈を模索し始めていました。こうしたなか、全日空の大庭元社長も詐欺師の毒牙にかかった権力者のひとりでした……。今回、ライターの藤原良氏が、戦後の日本で多発した「M資金詐欺」に翻弄された権力者とその顛末を紹介します。

金品を騙し取ることが目的のM資金事件

続いて同年、ロスチャイルドやロックフェラーから寄与金を得たとされる世界平和連合会で事務局長を務めることになる山本徹こと山崎勇を中心とした面々による富士製鐵を舞台にしたM資金詐欺が発生した。

 

このあたりから、いわゆる直接的な被害を伴った『詐欺』がはじまったと言える。M資金の物語をベースにして、巨額融資をするうえでの融資仲介料として山崎らが会社員から2,200万円を騙し取り、全国指名手配されたことが毎日新聞(1970年9月13日付)で大々的に報道された(山崎はその後不起訴)。

 

これが日本で最初に報道された「金品を騙し取ることが目的のM資金事件」と言われている。

 

また同年10月には『飛騨3兆円事件』が報道された。これは「岐阜県の飛騨地方の開発を巡って、飛騨の美しさに惚れ込んだ世界中の有名財閥がその開発費3兆円を投資し、飛騨市古川町を中心にして高速道路を有した都市開発を計画している」という詐欺師の話を信じ込んだ古川町の有力者が詐欺師から協力金として提示された1億円を支払い、騙し取られたという詐欺事件だった。

 

この詐欺師が逮捕された際も毎日新聞が「M資金詐欺の変種か?」と報道したことから、経済界のみならず日本社会全体に『M資金詐欺』という言葉が広がった。

 

市民に認知されすぎた結果か、しばらくはM資金をキーワードとした詐欺事件が起きることはなかったが、1978年に人気俳優の田宮二郎がM資金詐欺グループに騙され架空融資話を信じた結果、不動産投資で巨額の負債を背負い、債権者からの取り立てを苦に猟銃自殺をした。

 

この事件によって、M資金詐欺が再び世間の脚光を浴び、その後もM資金詐欺被害の代表例として語り継がれるようになった。

 

 

藤原 良

作家、ライター

 

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※本連載は、藤原良氏の著書『M資金 欲望の地下資産』(太田出版)から一部を抜粋し、再編集したものです。

M資金 欲望の地下資産

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藤原 良

太田出版

「私達のM資金は本物です」 「やっぱりあれはあったんですね……」 昭和から次々と大企業経営者たちが飲み込まれてきた「M資金詐欺」。 令和にもなお黒く輝き続ける“幻”の正体を追う。

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