「同調圧力チルドレン」という病
同調圧力に従っているということは、「従わなければ、みんなから見捨てられて孤立してしまう」と思い込んでいる“子ども”の状態に引き戻されているということです。
一つわかりやすい原体験の例で言えば、子どもが言うことを聞かないときに、親が「言うこと聞かないと置いて帰るからね!」「そんな子、ママはもう知りません」など
と捨てられること(孤立)をちらつかせながら言うことを聞かせる、あれです。
SNSで同調圧力をかける人も、世論や大衆の空気という名の同調圧力に流され、「孤立しないこと」をわかったうえで人を叩いているのです。
つまり、SNSなどでよく見られる正義中毒的な「同調圧力をかける人」も、もとをただせば「同調圧力に従ってしまう人」なのであり、根っこに共通するものは孤立する恐怖の有無によって態度を変える“子ども”の状態なのです。
そもそも“大人”というのは、他者や世の中がどうであれ、それと自分を切り離して自立した言動をとることができます。加えて、そこには安易な介入や同調圧力をかけないことによる相手への尊重もあるわけです。
しかし、同調圧力に従って“子ども化”した人(「同調圧力チルドレン」と名づけます)の根底には、「何をやっても許される!」「何を言ったって、相手は平気でしょ?」というような感覚が存在しています。
ちょうど幼い子どもが「自分は子どもだから、大人に何をやっても大丈夫」と思って、戯れながら大人にバシバシとパンチやキックをするのと変わりません(たとえ子どものパンチでも、結構痛いんですよね……)。
そしてこれは、コロナ禍で話題になった自粛警察が、「県外の車だから」「営業をやめないから」と、いまなら大丈夫とばかりに嫌がらせの張り紙をしたり、車体に傷をつけたりしていたのと同じ構図なのです。
同調圧力によって“子ども”の状態に引き戻されているから、「自分は正しいこと(正しいと思い込んでいること)をしているのだから、何をやっても許される」と、相手の状況を一切尊重することなく、なんでもできてしまった。
マスクをつけていない人を取り締まる「マスク警察」も、表面だけを見ればよいことをしているように見えますが、その構造としては「マスクをつけていない相手にどんな事情があるかなど1ミリも尊重せずに、多数派側からの視点で退治する」というヒーロー戦隊モノが好きな子どもじみた状態が見え隠れしているのです。