日銀による「異次元の超金融緩和政策」で状況が一変
この状況に変化がみられたのが、2013年以降です。日本銀行による異次元の超金融緩和政策が実施され、2013年から2021年までのインフレ率は、年あたり0.6%まで上昇しました。定期預金金利がインフレ率を下回る状態に変化し、金融資産を定期預金で保有していると購買力が低下する事態に陥りました。
1970年代のように急激なインフレ率上昇が発生しているわけではないものの、定期預金の魅力が低下している点は注意する必要があります。
2022年8月以降、日本のインフレ率(消費者物価指数(総合))は前年同月比3%以上の状況(2022年12月時点)が続いていますが、定期預金金利が追随する気配は見られません。定期預金に軸足を置いた資産運用による購買力の低下が鮮明になりつつあります。
定期預金は合理的な金融資産の運用手段でした。しかし、今後、数十年という長い期間にわたって資産形成と向き合うのであれば、これまでと異なる経済環境を想定し対応していく必要があるかもしれません。
過去数百年間の歴史を振り返ると、年金生活者が生活に苦しんだのはインフレ率の上昇期でした。現役世代として働けるうちは、給料や賃金の上昇がインフレの影響を帳消しにしてくれる可能性があります。一方、年金生活者においては、年金の受給額があらかじめ決まっているケースが多く、インフレにより購買力が低下するおそれがあります。
市場環境が移りゆくなかで、私たちは資産形成のあり方を考え直す時期を迎えているのではないでしょうか。
※当資料の閲覧に当たっては【ご留意事項】をご参照ください。ページに見当たらない場合は関連記事『定期預金は無意味?年金生活者を圧迫する「物価上昇」の苦難【金融のプロが警告】』をご覧ください。
平山 賢一
東京海上アセットマネジメント株式会社 参与
チーフストラテジスト
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