(※写真はイメージです/PIXTA)

人材不足が叫ばれる日本企業。DX推進にあたっても、デジタルの専門家などのIT人材を積極的に確保しようとする企業が多く見受けられます。しかし、これには誤解があるといいます。一体どのような意味なのでしょうか、みていきます。

DXを阻害する「未知なるものを排除する作用」

2.「組織のトランスフォーム」を意図的にデザインする組織開発

 

DXが謳われ始める以前から、産業界はイノベーションや変革・挑戦等の勇ましい合言葉とともに進んで来ましたが、これらもすべて、DXと同様に「当事者の不足」と「成功者の不足」という2つの不足によって、阻まれてきた歴史があります。

 

その結果、合言葉の趣旨に反し、多くの業界や企業で「閉塞感」が現状をよく表す言葉として用いられるようになりました。歴史的にも、「文化の差を超え、能動的に変革を起こそうとする営み」は常にマイノリティです。誤解を恐れずに言い切ると、ほぼすべての人が、新たなデジタルツールを活用するよりも慣れた方法に固執したままでいたいし、自らトランスフォームしたいとも思っていないのです。

 

これらの帰結は、ある種の本能的なものです。たとえば、「未知・未経験のものは受け入れたくない」といった心理作用は、「現状維持バイアス」としても知られており、ご存知の方も多いでしょう。さらに日本のような同質化した社会では同調圧力が強く、異端を放っておかず「積極的に排除しようとする」作用が加わり、「閉塞感」はより加速します。

 

実際に、DXが進まない要因として、冒頭で紹介したような各種調査を横断的に俯瞰して纏めると、以下が主であるとされております。

 

・トップやマネジメント層の理解不足

・データの取り扱いやデジタル技術への理解不足

・人材や実行組織の不足、不備

 

これらはすべて、「相互理解の不足」を示す現象といえますが、このような相互作用の問題は、個人に帰責していても解決せず、悪化させてしまうことにもなりかねません。むしろ、このような状態を維持し続けているチームや組織を含めた仕組み側に、本能的かつ構造的な課題があることを前提に「異端・異質を排除せず新規の取り組みを支援し合える」環境や仕組みを意図的に取り入れていく必要があります。

 

DXが語られる多くの場で「データやデジタル技術をいかに活用するか?」という道具に関する議論が中心になりがちですが、多様性を認め合うダイバーシティへの感度を高め、道具を扱う側の課題に向き合うことこそが不可欠なのです。

 

そのためには、チーム内の関係性を向上させることや、そのチームを内包する組織全体の機能や能力を改善することが、それぞれ重要な取り組みとなるはずなのです。しかし、それが見逃されているため、上記のような阻害要因が未解決のまま残り続けていると断言できます。

 

このような「組織のトランスフォーム」に取り組むことは、DXを推進するうえで最も難易度が高く時間もかかる課題ですが、それが改善・向上し始めた際におよぼされる推進力は、DXを成し遂げるための必要条件です。DXをある種の「盾」に、ついでに理想の組織まで追求してしまいましょう。

先にデジタル技術の導入だけをしてしまう企業

3.上記に基づいた「事業のトランスフォーム」としての新規事業開発

 

DXへの挑戦には「人のトランスフォーム」と「組織のトランスフォーム」が要求されることをお話してきました。上述のとおり、DXを進めるプロセスは「データやデジタル技術ありき」ではありません。

 

しかし現状では「なにを目的に、どの方向にトランスフォームすることで、顧客に新たな価値を届けるのか」が曖昧なまま、データ活用やデジタル技術の導入だけをしてしまうことで起こる「トランスフォームしないデジタル化」が横行しています。

 

つまり、明確なビジョンなしにDXを推進しようとしているのです。ビジョンは、外部から与えられることも多いものですが、DXに限らず変革は常に能動的な営みでなければ達成されません。

 

「やらされ仕事」ではなく、自らが最終的にどんな状態を達成し、どんなありたい姿でいたいのか? といった自分事化されたビジョンを持てていることを前提に、その達成に向けてデータやデジタル技術は道具として活用するという、優先順位が重要になります。プロセスに纏めると【ビジョン(言葉)→行動→思考→インサイト→価値作り】という流れになります。

 

DXを推進するには、「データやデジタル技術そのものへの専門性が高い者」よりもむしろ「イノベーションに関する経験や洞察を持った推進者」が、形式知として組織内に展開していく必要があるのです。

 

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