(※写真はイメージです/PIXTA)

ある日、自身が保有する物件の入居者から「天井から水が漏れている」との報告を受けたオーナー。原因と思われる、上の階の入居者に「調査のため部屋に入らせてほしい」と依頼したところ、立ち入りを拒絶されてしまいました。このままでは物件の修繕もままならないオーナーは、立ち入りを拒絶した入居者との賃貸借契約を解除するため提訴。裁判所の判決は……賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が解説します。

建物の修繕を妨害する入居者…裁判所の判断は

この事案は、ある賃借人の居室の天井から水漏れが生じたため、その原因の究明のために、賃貸人がその上階の賃借人の居室への立ち入りを求めたものの、あれこれ理由を付けて拒絶したため、賃貸人が契約の解除を主張して提訴したという事案です。

 

この事案において、裁判所は、まず、賃借人が立ち入りを拒絶した理由についてはいずれも合理的根拠がないとし、

 

漏水に関して本件居室の立入調査が実施できていないのは、賃借人が正当な理由なくこれを拒絶しているためであり,このことは,本件賃貸借契約上の債務不履行を構成する」と認定した上で、それを解除事由とすることができるかは、「賃貸借契約の基礎をなす賃貸人・賃借人間の信頼関係が破壊されたと認められるかどうかの検討が必要

 

と述べました。

 

そして、信頼関係が破壊されたか否かについて、

 

賃貸人が賃借人に対して漏水の調査のための立ち入りを求めるにあたり、賃貸人としてなすべき努力を十分に尽くしていたにも拘わらず、賃借人側が、一度も調査に応じる意思を明示せず、また、立ち入りを認めるための条件として、漏水とは全く関係のない、居室の設備等の修繕等を求め、その完全実施を漏水調査への協力の条件とするかのような内容の回答をしたことをもって、この段階において信頼関係は破綻されるに至ったというべきである

 

と述べて、契約の解除を認めました。

 

この事案では、過去にこの漏水の調査以外でも賃借人側が賃貸人側に対して過度に神経質とも取れるような対応をして紛争を生じていたという事情も認定されていて、こういった事情も信頼関係破壊による解除を認めたひとつの要因と考えられます。

 

この点において、本件は若干特殊な事例といえなくもないのですが、いずれにしても、賃借人が不当に建物の維持・保存のために必要な修繕の調査や工事を拒むような対応を続けた場合には、契約の解除原因になり得るということを示したひとつの事例として参考になります。

 

※この記事は、2022年7月19日時点の情報に基づいて書かれています(2023年1月9日再監修済)。

 

 

北村 亮典

弁護士

大江・田中・大宅法律事務所

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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