建物の修繕を妨害する入居者…裁判所の判断は
この事案は、ある賃借人の居室の天井から水漏れが生じたため、その原因の究明のために、賃貸人がその上階の賃借人の居室への立ち入りを求めたものの、あれこれ理由を付けて拒絶したため、賃貸人が契約の解除を主張して提訴したという事案です。
この事案において、裁判所は、まず、賃借人が立ち入りを拒絶した理由についてはいずれも合理的根拠がないとし、
と述べました。
そして、信頼関係が破壊されたか否かについて、
賃貸人が賃借人に対して漏水の調査のための立ち入りを求めるにあたり、賃貸人としてなすべき努力を十分に尽くしていたにも拘わらず、賃借人側が、一度も調査に応じる意思を明示せず、また、立ち入りを認めるための条件として、漏水とは全く関係のない、居室の設備等の修繕等を求め、その完全実施を漏水調査への協力の条件とするかのような内容の回答をしたことをもって、この段階において信頼関係は破綻されるに至ったというべきである
と述べて、契約の解除を認めました。
この事案では、過去にこの漏水の調査以外でも賃借人側が賃貸人側に対して過度に神経質とも取れるような対応をして紛争を生じていたという事情も認定されていて、こういった事情も信頼関係破壊による解除を認めたひとつの要因と考えられます。
この点において、本件は若干特殊な事例といえなくもないのですが、いずれにしても、賃借人が不当に建物の維持・保存のために必要な修繕の調査や工事を拒むような対応を続けた場合には、契約の解除原因になり得るということを示したひとつの事例として参考になります。
※この記事は、2022年7月19日時点の情報に基づいて書かれています(2023年1月9日再監修済)。
北村 亮典
弁護士
大江・田中・大宅法律事務所
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】