相続税の税務調査で疑われる「怪しい通帳」の共通点【税理士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

相続税の税務調査において、調査官が税金申告漏れを見抜くためにもっとも活用する資料が金融機関の取引履歴、すなわち「通帳」です。実は、税務調査で指摘される通帳には“ある共通点”があることをご存じでしょうか? 富裕層・IPO税務を専門とする黒田悠介税理士(税理士法人Bridge 代表)が、数々の経験に基づき、「税務調査で疑われる通帳」について解説します。

相続税の税務調査で「通帳」は必ず見られている

相続税の調査で必ずチェックされるのが「通帳」です。通帳の入出金の動きで、おかしなところはないかを調査官は隅々まで確認します。預金口座を通じ、どのような取引が行われていたかを調べ、怪しいポイントがないかを確認しているのです。

 

たまに通帳を紛失してしまった方や、見られたらまずい思い通帳を隠している方もいらっしゃいますが、それは税務署には通用しません。税務署は「国税通則法」という法律によって全国の金融機関を調査する権限を持っています。調査官に求められたら金融機関は預金残高や取引履歴の開示を拒むことはできないのです。

通帳は「過去何年分」の記録を見られるのか?

税務署は金融機関に対し、通常「過去5年分」の通帳の履歴の確認を行います。そして「これは怪しいかも?」と思ったときは「過去10年間」に渡っての確認を行います。

 

10年というのは、金融機関が保存している記録がおおむね過去10年分だからですが、税務署が過去の税務調査で得た情報も蓄積資料として活用していますので、中には数十年さかのぼられたというケースもあります。また、故人の通帳だけでなく、相続人(配偶者・子)や孫や子の配偶者といった近しい関係の方の通帳も調査の対象となります。

調査官が「怪しい!」と思う通帳の共通点

調査官がこれは怪しい!と思う通帳は以下4つのケースです。

 

①入金ばかりで使った形跡のない通帳

②亡くなる直前に引き出しのある通帳

③数年で預金が大きく減っている通帳

④預金の増え方が収入に見合っていない通帳

 

それぞれのケースについて、どこが怪しい!と思われるのか解説していきます。

 

<①入金ばかりで使った形跡のない通帳>

子・孫などの名義の預金口座で、入金ばかりがあり、出金の形跡がない通帳。これを見つけると税務署は相続財産漏れを真っ先に疑います。

 

相続税対策として、子・孫の名義で口座を開設し、そこにお金を「内緒」で預金していく方がいます。この通帳を相続税用語では「名義預金」といいます。名義預金とは、名義上と実質的な預金者が違う預金のことです。

 

ここで重要なのは、「内緒」で預金していたために、故人と子・孫の間に「贈与契約」が成立しておらず、通帳名義は子・孫であったとしても、実質的な所有者は故人なので、これは相続税の対象になるという点。名義預金との指摘を受けてしまいます。

 

たとえば、故人が孫名義の口座に、贈与税の基礎控除額(110万円)の範囲で預金をしていても、孫がそのことを知らなければ、贈与契約が成立しているとはいえません。この預金は「名義預金」となり、相続財産に含めなければならないのです。

 

子や孫からすれば存在を知らない通帳ですから、使うことはできません。使った形跡のない入金ばかりの通帳は、税務調査官からすると「使っていない」ではなく「使えなかった」=「名義預金」と見える怪しい通帳なのです。

 

<②亡くなる直前に引き出しのある通帳>

故人が亡くなる直前に引き出した金額は、調査官から見ると「お! これは相続財産から漏れているのでは?」となります。なぜなら、亡くなる直前に引き出された金額は、生前に使われていないので、相続税申告において手元にある「現金」として計上をする必要があるためです。通帳を見て、亡くなる直前に引き出しがあった場合はきちんと「現金」として申告するように注意が必要です。

 

<③数年で預金が大きく減っている通帳>

故人名義の通帳で、亡くなる前の数年間で預金が大きく減っている通帳を見つけると、調査官の目はキラリと光ります。

 

相続税の申告書には、被相続人の死因や病歴を添付することになっています。では、なぜ調査官はその情報を知る必要があるのでしょうか? それは故人が亡くなる前に、どれだけ意思決定能力があったのかを確認するためなのです。

 

たとえば故人が認知症等ではっきりとした意思がなかったときに、預金が引き出されていれば、その引き出しを行ったのは誰か?ということになります。その引き出されたお金が入院費等の故人のために使われていればもちろん問題はありません。しかし、それを相続人が私的につかっていたら、その金額は贈与・相続の財産漏れというふうになり、税務調査の指摘対象となるのです。

 

<④預金の増え方が収入に見合っていない通帳>

相続人(配偶者・子・孫など)の収入や生活費から、調査官は相続人が持っている預金がどの程度か推測をします。しかし、計算上適当な額以上のペースで預金が増えているとき、調査官はその預金の出どころを疑います。その預金が、故人からの「贈与」で増えていたなら、きちんと贈与税の申告はされているのか? 調査官はそのように考え、預金の増え方が収入に見合っていない通帳に目を光らせているのです。

まとめ:いらぬ疑いを持たれないために

たとえば上述の「名義預金」を疑われないようにするためには、通帳やキャッシュカードをきちんと子や孫の本人に管理させ、その通帳のお金を実際に使っていくことが重要です。税務調査官に「いらぬ疑い」を持たれないようにするためにも、どのような通帳が怪しいと思われるのか? その理由は?を事前に認識し、対策しておきましょう。

 

 

黒田 悠介

税理士法人Bridge 代表

税理士・政治資金監査人

 

あなたにオススメのセミナー

    税理士法人Bridge 代表
    税理士・政治資金監査人 

    大手税理士法人で相続対策・事業承継業務に従事。 その後、金融機関・IPO企業・富裕層コンサルティング会社を経て、税理士法人Bridge東京・静岡事務所を創設、現在まで代表を務める。「お客様に幸せの架け橋を」というビジョンを掲げ、IPOコンサル・相続事業承継対策など多角的な税務サービスを行っている。

    【⇒税理士法人Bridge HP(https://bridge-tokyo.co/)】
    【⇒Instaglam】

    著者紹介

    連載実績豊富な専門家が教える「相続・事業承継・IPO」

    メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

    登録していただいた方の中から
    毎日抽選で1名様に人気書籍をプレゼント!
    TOPへ