税務調査は「事前連絡アリ」が主流
相続税の税務調査は、納税者の同意を得て行われる「任意調査」と呼ばれるものが一般的です。ただし「任意」とはいっても、拒否すれば罰則が適用されますので、調査対象となった納税者は協力する義務があります。
しかし、ドラマでよくある「強制調査」のように税務調査官が突然押しかけてくるわけではなく、「税務調査に伺います」と事前に電話連絡がかかってきます。この連絡は事前通知と呼ばれています。
電話がかかってきたらどう対応すればいい?
税務調査官から事前通知で伝えられる内容は主に以下の項目です。落ち着いて電話を受けながら、メモを取っておくことがおすすめです。
・税務調査が行われる日時
・訪問場所
・調査対象となる期間
・調査の目的と対象となる税目(相続税、贈与税など)
・調査の際に提出が求められる書類の内容
・訪問する調査官の氏名や所属
なお、税務調査の日程は決まっているわけではなく、変更の依頼をすることができます。相続税申告をした際に依頼した税理士がいる場合には、まず連絡をとってみましょう。
また、税理士をつけないで申告した場合でも、税理士に相談・立ち合いを依頼することは可能です。不安があるなら税務調査が始まる前に、税務調査の対応実績が多い税理士事務所へ問い合わせてみることもおすすめです。
税務調査当日までにやっておくべきこと
税務調査の日程が決まったら、当日までに「事前通知で依頼された書類やデータの整理整頓」や「受け答えも含めた税理士との事前の打ち合わせ」を準備しておくことがおすすめです。税務調査時の受け答えの仕方によって、追徴でとられる税金は大きく変わります。その点でも事前の準備はとても大事です。
税務調査当日の流れ
税務調査当日になると、税務調査官が2名程度で相続人のところを訪問します。
税務調査は、朝10時から始まり、17時くらいまで行われるのが一般的です。調査官からの故人の職業、収入、財産の状況などを聞かれるほか、相続人についても同様の内容を質問されます。そのほか通帳や印鑑の確認、家具の中などを調査されます。調査が1日で終わらないと判断された場合には、2日以上にわたって行われるケースもあります。
税務調査に入られやすいケース
相続税の税務調査に入られやすいのは以下のような場合です。
■申告書に不備がある場合
税務署は、提出された相続税申告書を機械でスキャンし、簡単な計算間違いがないかチェックをします。申告書の内容に漏れや計算ミスなどがあると、この納税者はほかにもミスをしているのでは?と税務調査が入る可能性が高くなります。
■2億円以上など納税額が高い富裕層
税務署は調査対象を選定するために、KSKシステム(国税総合税管理システム)を使って富裕層を把握する独自のリストを持っています。相続財産が多いということは、それだけ財産の計上漏れや見逃しが生じやすくなるため、税務調査が入る可能性が高くなります。
■相続財産に海外資産が多い場合
富裕層では脱税や節税の方法として海外の資産が利用することが多いです。そのため海外資産が多い方はより重点的に税務署にマークされています。
■税理士をつけないで申告をした場合
税理士が依頼を受けて相続税の申告をした場合には、申告書に税理士の署名が入ります。その署名がない申告書は税金のプロが申告をしていない、つまりミスがあるのでは?と判断され、税務調査が入る可能性が高くなります。
■預金の出金が多くある場合
預金の出金がたくさんある場合には、「名義預金」や「贈与の申告漏れ」が疑われます。「名義預金」とは、被相続人が配偶者や子ども、孫などの名義で開設した口座のことで、被相続人が実際にその預金を管理している場合には相続財産であるとみなされ、相続税の対象となります。また、専業主婦など収入のない配偶者や子・孫の預貯金が多い場合などは「名義預金」や「贈与の申告漏れ」が疑われ、税務調査が入る可能性が高くなります。
税務調査に入られる「割合」や「実施される時期」は?
国税庁では、相続税の申告件数や税務調査の実施件数を公表しています。その公表データから税務調査に入られる割合を求めると約9%となります。つまり相続税の申告をした人のうち、およそ11人に1人に対して相続税の税務調査が実施されていることになります。
なお、相続税の税務調査は毎年8月~11月の間に連絡を受けることが多いです。これは税務署職員の人事異動が7月に行われることに関係しています。事前通知があった後、実地での調査やのその後のやりとりがあり、年末にむけて税務調査が終了するというのが一般的な流れです。
なるべく税務調査に選ばれないようにするには
税務調査を受けて申告漏れを指摘された場合、追加の相続税だけではなく加算税や延滞税を納めなければなりません。心労もありますし、なるべく税務調査を受けないで済むようにしたいところです。相続財産の金額・内容がわかる資料を申告書に添付する、税理士が申告内容について詳細な説明書類を添付する「書面添付制度」を利用する等で、税務署からの信頼性が高まり、税務調査を受ける確率は低くなります。しっかりと事前の対策を練ったうえで、相続税の申告を行うことが重要です。
黒田 悠介
税理士法人Bridge 代表
税理士・政治資金監査人
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