そもそも、税務調査の段階では「両方とも経費化NG」
税務調査時点において、税務署は2,700万のフェラーリも2,600万円のクルーザーも、会社の経費としては認めませんでした。
税務調査官は「フェラーリやクルーザーは社長の個人的趣味のために買ったものなので、会社の事業に使う資産ではなく、趣味に基づく個人的な資産である」とし、その両方を法人税の経費として認めない判断を下していました。
一方で、会社側の主張は「両方とも経費!」。フェラーリは代表者の普段の通勤や各支店を巡回するときの移動手段として利用するなど、会社の事業ためにもちろん使っている。クルーザーは会社の福利厚生のために利用しているし、釣りによる接待等で、同じく会社の事業のために利用している。これが会社側の主張でした。
結果、両者の主張は折り合わず、国税不服審判所で争われることになりました。
国税不服審判所の判断は…
フェラーリに関しては、国税不服審判所は以下のような理由から、税務署側の主張ではなく会社側の主張を認め、経費に計上してよいとの判断をくだしました。
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【フェラーリは経費化OK!】
●2,700万のフェラーリについては、過去の車検記録からしっかりとした使用の実績があることがわかる。
●代表者について、交通費・通勤手当を支給していないので、フェラーリは通勤用に使用したものと思われる。
●代表者は他にも高級車を複数台所有しているが、それは会社の資産としていない(プライベート用高級車は他に保有している)
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フェラーリの経費はOKでしたが、その一方でクルーザーに関しては、国税不服審判所は税務署側の主張を認め、会社経費としてはNGと判断しました。その主だった理由に、次のような内容が挙げられます。
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【クルーザーは経費化NG!】
●2,600万円のクルーザーについては運航した記録が保管されていない。接待に関して、「いつ」「誰を」乗船させたかという記録がないので、会社の事業用に使ったかが確認できない。
●「福利厚生の一環として使用した」というが、その実績が記録されておらず、またそのクルーザーについての会社としての福利厚生規定もない。
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経費NGとなったクルーザーは、その後「ダブル課税」へ
このようなことから、2,600万円のクルーザーは会社の経費とは認められず、代表者の個人的な資産として認定されてしまいました。クルーザーの購入金額2600万円が代表者への役員賞与とされ、会社は大きな追徴税額を払うこととなりました。
代表者への賞与は税法上、会社経費とならないので法人税約30%の負担。さらに賞与に対する所得税の追加納付で約50%の追加納税。いわゆる法人税も所得税もかかってしまう、約80%のダブル課税となってしまいました。
クルーザーを会社経費にするには、どんな対応が必要だったのか
結論だけを見てしまうと、高級外車(フェラーリ)は経費OKで高級船舶(クルーザー)は経費NGなのか?と考えてしまいがちですが、ポイントはそこではありません。
会社の経費として認められるか否かの判断のポイントは、高額かどうかだけではなく、
①会社の事業のために使用していることが明確になっている
②その事実を客観的に証明できる証拠を保管している
この2点が重要です。
使用されているその実態がどうなのか? 会社のために使っているのか?という視点で税務署は調査を行います。フェラーリについては、事業用に使用していたことが明らかで、それを客観的に証明できたことから会社の経費として認められました。クルーザーについてはその証明ができなかったので、このケースでは経費として認められませんでした。
クルーザーだからNGだったというわけではなく、
●福利厚生規程を作成して、福利厚生施設として利用する(研修で使う、社内クラブの活動、社員のプライベートでの貸出)
●運行記録・乗船名簿をしっかり作成し保管しておく
と、このようにしっかり利用規定を設けて、接待・福利厚生目的で利用されたという実態・その記録があれば、また違った結果(経費OK)になっていたとも思われます。
まとめ
一般的に高額といえる2,700万円のフェラーリを、国税不服審判所では経費として認めました。大事なのは、会社の事業のために使用していること、それをしっかり証明できるかという点です。
ただし、記録があれば何でもかんでも絶対大丈夫というわけではありません。高額資産はもちろん、税務調査で目を付けられる可能性が高いです。しっかりと課税リスクを認識し、またその対策(使用実績とその記録)をした上で、どうするか? その判断する必要があります。
黒田 悠介
税理士法人Bridge 代表
税理士・政治資金監査人
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