2022年10月、円相場は1ドル=150円を突破し、32年ぶりの円安水準を更新。きたる物価高・円安・大増税時代には、円資産を持っているだけだと資産は熔けていくばかり……。いかにして資産を防衛し、運用していけばいいのか? 本連載は、世界最大の資産運用会社「ブラックロック」日本法人の最高投資責任者(CIO)の河野眞一氏と、3000人以上の富裕層をコンサルティングしてきた外資系プライベートバンカー長谷川建一氏の著書『世界の富裕層が実践する投資の鉄則 誰も教えてくれなかった本当の国際分散投資 』(扶桑社)を一部抜粋・編集したものです。
次世代ファンドは数理分析(クオンツ)×AIで高リターンを維持
戦略や戦略のユニークさ、実現可能性、ファンドマネジャーたちのチームのデューデリジェンス(投資対象となる企業や投資先の価値・リスクなどを調査すること)などを経て絞り込んでいますが、その目利きこそが私に期待されていることだと思っています。
この5年くらいは業績相場がどこでピークアウトするかを考えていて、そうなってもリターンが取れる戦略を探してきましたが、その1つが先ほど挙げた債券市場に投資するポートフォリオです。
ほかにも、「クオンツ・グローバルマクロ」に分類される、とあるファンドがあります。彼らは、データ解析による数理的な分析(クオンツ)に、AIを導入したトレーディングリスクの分散化を実現しています。
加えて、AIによりマーケットの歪みをモニターし、それを収益機会とするアービトラージ(裁定取引)で収益を積み上げていきます。このファンドの期待リターンは、年率18~25%(過去5年間の実績に基づく)。規模拡大により収益パフォーマンスはマイルドになっていくでしょうが、当面は高いリターンをもたらすと考えています。
こういったファンドを玉石混交のなかから探し当てることは、金融市場で運用の経験がある人にとっても難しいことです。
だからこそ、資産運用では「誰に相談するか」が重要なカギとなり、プライベートバンクやファミリーオフィスがなくならないのは、そのためなのです。高いスプレッドを支払ってでも、ステータスのあるプライベートバンクと取引をするのであれば、そのくらいのメリットを引き出すことは当然でしょう。
長谷川 建一
Wells Global Asset Management Limited, CEO/国際金融ストラテジスト<在香港>
Wells Global Asset Management Limited, CEO最高経営責任者
国際金融ストラテジスト <在香港>
京都大学法学部卒・神戸大学経営学修士(MBA)
シティバンク東京支店及びニューヨーク本店にて、資金証券部門の要職を歴任後、シティバンク日本のリテール部門やプライベートバンク部門で活躍。 2004年末に東京三菱銀行(現:MUFG 銀行)に移籍し、リテール部門のマーケティング責任者、2009年からはアジアでのウエルスマネージメント事業を率いて2010年には香港で同事業を立ち上げた。その後、独立して、2015年には香港金融管理局からRestricted Bank Licence(限定銀行ライセンス)を取得し、Nippon Wealth Limitedを創業、資産運用を専業とする銀行のトップとして経営を担った。
2021年5月には再び独立し、Wells Global Asset Management Limitedを設立。香港証券先物委員会から証券業務・運用業務のライセンスを取得して、アジアの発展を見据えた富裕層向けサービスを提供している。(香港SFC CE No. BIS009)
世界の投資機会や投資戦略、資産防衛にも精通。個人公式サイトなどを通じて、金融・投資啓蒙にも取り組んでいる。
● 個人公式サイト
「HASEKENHK.com」(https://hasekenhk.com/)
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