※画像はイメージです/PIXTA

2022年10月、円相場は1ドル=150円を突破し、32年ぶりの円安水準を更新。きたる物価高・円安・大増税時代には、円資産を持っているだけだと資産は熔けていくばかり……。いかにして資産を防衛し、運用していけばいいのか? 本連載は、世界最大の資産運用会社「ブラックロック」日本法人の最高投資責任者(CIO)の河野眞一氏と、3,000人以上をコンサルティングしてきた外資系プライベートバンカー長谷川建一氏の共著書『世界の富裕層が実践する投資の鉄則 誰も教えてくれなかった本当の国際分散投資 』(扶桑社)より、2023年からの投資の鉄則について解説します。

運用会社の銘柄の絞り込み方

私がブラックロック・ジャパンに在籍していた当時、ブラックロックグループ全体の運用資産は4兆ドル、当時のドル/円レートで約480兆円でした。

 

それだけ巨大な運用会社ですから、個人投資家がアクティブに個別株に投資するのとは異なる部分が多いかもしれません。しかし、一般的な運用会社ではどのように投資する銘柄を決めるのか、銘柄選別のプロセスは参考になる点もあるでしょう。

 

ここでは、株価指数のパフォーマンスを上回ることを目標に、企業の業績や財務状況の分析によって組み入れ銘柄を決める一般的なグロース(高成長)系株式ファンドの銘柄選別をご紹介します。

 

投資する銘柄を決めるには、ステップ1からステップ4までの絞り込みを行い、その銘柄が投資するに値するかを見極めていきます。

ステップ1

まず、ステップ1ではファンドのテーマに沿って、「TOPIX」、「グロース株指数」など投資対象を決定します。

ステップ2

ステップ2では、ステップ1で浮上した銘柄群の「財務諸表の変化」に着目し、機械的な銘柄スクリーニングで絞り込んでいきます。

 

ここでは、「再建中の企業の赤字脱却が可能か」「赤字からは脱却できたが、安定した利益が定着できるか」「売上高の伸びに利益が追いついてこられるか」「さらなる成長拡大が可能か」などを見極めるため、四半期決算などのデータから機械的に銘柄を絞り込み、300銘柄程度のリストを作成します。

ステップ3

ステップ3では、財務諸表や決算説明の資料などを調査し、変化をもたらした要因を分析し、変化の兆しが本物かどうか、その変化が継続できるのかなどを見極めます。

 

ステップ2までは機械的なスクリーニングでしたが、ここからは数字には表れない部分をチェックしていくため、人の手による調査・分析が始まります。この作業で、100銘柄程度のリストを作成します。

ステップ4

最後のステップ4では、担当者が実際にその企業を訪問し、CEO(最高経営責任者)やCFO(最高財務責任者)に会ってヒアリングを行い、これまで調べてきた変化が本物かどうかを確認。

 

企業文化の浸透性やガバナンス(企業統治)の体制、企業戦略がスムーズに執行できる体制づくりができているかなどにも着目します。

 

ステップ4をクリアし、「成長に向けた変化の兆し」が本物で今後も継続すると判断されれば、リスクプロファイル(その銘柄をポートフォリオに組入れた場合の、ポートフォリオ内のリスクのバランスをチェックする作業)を経た後に、ポートフォリオへの組み入れ額を決定します。

 

この銘柄絞り込みの方法は、変化の兆しから読み取れる企業の〝長期的な成長〟をリターンの源泉にする事を前提にしています。つまり、「マーケットに織り込まれていない長期的な成長が期待できる銘柄」を選択する方法です。

 

したがって、バリュー株投資においてよく使われるPER(株価収益率)やPBR(株価純資産倍率)などから類似企業やそれら指標の過去の推移と比較するなどして、株価の割安度を図ることはしません。

 

それら指標の水準を考慮するとしたら、銘柄選別のときではなく、主に売買タイミングを見極める際になります。

 

しかし、グロース株のような将来の成長性を先取りし、割高になりやすい銘柄のケースでは、PERやPBRなどの株価指標が過去の推移と比較して割安になるのを待っていると、適切な投資タイミングを逃すことにもなりかねません。グロース株投資においては、それらの株価指標はさほど重視しないほうがいいでしょう。

 

このステップ1からステップ4までの銘柄選別のやり方すべてを個人が行うのは、難易度が高いかもしれません。特に、企業の責任者に直接会って話を聞くのは、個人では不可能に近いと言っていいでしょう。

 

それでも、どういった視点で銘柄を絞り込むのか、選別する際に何を重要視しているかなど、銘柄絞り込みの考え方は参考になるはずです。

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    ※ 本連載は、河野眞一氏、長谷川建一氏の共著書『世界の富裕層が実践する投資の鉄則 誰も教えてくれなかった本当の国際分散投資』(扶桑社)から一部を抜粋し、再構成したものです

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    河野 眞一、長谷川建一

    扶桑社

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