富裕層がこぞって資産運用に海外保険を活用するワケ
富裕層の保険活用の一つに、大型の生命保険への加入があります。死亡時に家族が生活できるように数億円の保険を掛けたり、遺族が相続税などの税金を払うための資金を保険でカバーしたり、事業のリスクを補ったりするため、自らを被保険者に契約するケースが目立ちます。
たとえば、40歳男性・非喫煙者の場合、死亡保障金1,000万ドルの死亡保障保険に加入しようとすると、加入時一括払いの保険料は193万7,200ドル。加入時の解約返戻金は154万9,760ドルになります。
では、この保険が満15年を経過すると、どうなるのでしょうか。この時点での解約返戻金は204万8,520ドルに増え、11万1,320ドルが残ることになります。
つまり、15年間、死亡保障をかけられただけではなく、11万1,320ドルも儲かるということなのです。なお、死亡保障金額は1049万8,760ドルに増えているので、そのまま契約を維持しても構いません。
加入時に一時払いをすると大きな支出になりますが、先ほどと同じく金融機関は解約返戻金の95%の147万2,272ドルまで融資をしてくれるので、加入者が実際に支払う保険料は46万4,928ドル。
この場合、満20年で解約すると、解約返戻金は235万3,773ドルで、金利を加えた借入金の総返済額は196万9,899ドルと、差し引き38万3,874ドルとなります。支払う金額は実質8万1,054ドルだけで20年間、1,000万ドル(約14億円)もの死亡保障保険が手に入るのです。
海外保険活用のメリットとデメリット
メリット 〈遺産の相続や継承に不可欠なキャッシュを用意できる〉
保険は手数料が割高で、長期間流動性を奪うデメリットがあることは事実です。しかし、保険に加入することで万が一のときに備えて、必要な金額のキャッシュを用意することができるのです。
どこに住んでいても遺産の承継や分割には現金が必要となり、香港のように相続に課税されない国や地域に居住していても、不動産のように流動性が限られ現金化しづらい遺産を相続・分割するには現金が必要となります。
相続財産に占める不動産の割合が高い日本人富裕層の場合はより深刻で、相続税の支払いは頭の痛い問題。相続税の申告・納付期限は被相続人が死亡したことを知った日から10ヵ月以内と定められているので、金策に走ることも少なくありません。その点、死亡保険金は書類に不備がなければ申請から1ヵ月もあれば保険金が支払われるので、相続税対策にもなるのです。