若手医師が「在宅医」を避けるワケ
俳優の吉永小百合さんが在宅医を演じた映画『いのちの停車場』を観た人は分かると思いますが、在宅患者の住環境はさまざまです。掃除や整理整頓が行き届いたきれいな家ばかりではありません。
最近の若い医師には恵まれた環境で育ってきた人も少なくないので、高齢になって家事もままならなくなり、汚れものやゴミが散乱したような家屋に入って診療をすることに抵抗を感じる医師もいます。
また最近の若い医師は、仕事に対する価値観も昔とはだいぶ異なっています。
現在50代の私が若い頃は、人より多く稼ぎたければ人の3倍働けばいい――そんな猛烈な働き方がもてはやされ、実際に実践している医師たちも多くいたものです。
しかし、今は高い給与を出すだけでは動かない傾向があります。人材派遣会社の担当者と話をすると、若い医師たちが何を求めているのか分からないとこぼしています。
私が想像するに一定の給与水準に加え、働きやすくてある程度は自分の時間をもて、医師としてのやりがいも得られる――そういうワークライフバランスを求めて勤務先を吟味しているように感じます。
ときおり画一的な病院医療に納得できず、患者を自宅や生活の場で支えたいという、高い志や意欲のある若い医師もいます。
ただそういう医師はだいたい自分で在宅医療クリニックを開業しています。現状のような給与体系や働き方のままでは、クリニックに勤務する若い在宅医は増えていかないだろうと危惧しています。
大城 堅一
医療法人社団星の砂 理事長
ねりま西クリニック 院長