(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の昨今、自宅で診察や治療が受けられる「在宅医療」のニーズは高まるばかりです。しかし、高い志や意欲のある一部を除いて、特に若手のあいだでは「在宅医療を専門にしたい」と考える医師が少ないと、ねりま西クリニックの大城堅一院長はいいます。ニーズが高まる一方で在宅医が増えないのはなぜなのか、大城院長が解説します。

若手医師が「在宅医」を避けるワケ

俳優の吉永小百合さんが在宅医を演じた映画『いのちの停車場』を観た人は分かると思いますが、在宅患者の住環境はさまざまです。掃除や整理整頓が行き届いたきれいな家ばかりではありません。

 

最近の若い医師には恵まれた環境で育ってきた人も少なくないので、高齢になって家事もままならなくなり、汚れものやゴミが散乱したような家屋に入って診療をすることに抵抗を感じる医師もいます。

 

また最近の若い医師は、仕事に対する価値観も昔とはだいぶ異なっています。

 

現在50代の私が若い頃は、人より多く稼ぎたければ人の3倍働けばいい――そんな猛烈な働き方がもてはやされ、実際に実践している医師たちも多くいたものです。

 

しかし、今は高い給与を出すだけでは動かない傾向があります。人材派遣会社の担当者と話をすると、若い医師たちが何を求めているのか分からないとこぼしています。

 

私が想像するに一定の給与水準に加え、働きやすくてある程度は自分の時間をもて、医師としてのやりがいも得られる――そういうワークライフバランスを求めて勤務先を吟味しているように感じます。

 

ときおり画一的な病院医療に納得できず、患者を自宅や生活の場で支えたいという、高い志や意欲のある若い医師もいます。

 

ただそういう医師はだいたい自分で在宅医療クリニックを開業しています。現状のような給与体系や働き方のままでは、クリニックに勤務する若い在宅医は増えていかないだろうと危惧しています。

 

 

大城 堅一

医療法人社団星の砂 理事長

ねりま西クリニック 院長

 

※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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