(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の昨今、自宅で診察や治療が受けられる「在宅医療」のニーズは高まるばかりです。しかし、経験不足や人員不足をはじめ、医師側の医療体制には問題点がいくつもあると、ねりま西クリニックの大城堅一院長はいいます。複数のデータと筆者の経験をもとに、在宅医療の現状と問題点についてみていきましょう。

在宅医療を担っているのは、「町の開業医」が中心

日本医師会総合政策研究機構では、2017年に「診療所の在宅医療機能調査」を行っています。これは全国の在支診の届け出施設と、在宅時医学総合管理料(在宅医療の診療報酬)の届け出をしている診療所4,386施設を対象にしたもので、わが国の在宅医療の実態が表れています(有効回答数1,527施設)。

 

この調査によると対象施設のうち、在支診の届け出をしているのは、58.2%にとどまっています。在支診の届け出をせずに、必要に応じて訪問診療や往診などを行う施設が約40%に上っています。

 

施設規模では88.3%が入院設備をもたない無床診療所です。施設における在宅医療の位置づけは87.4%が「外来の延長」と回答しており、「在宅中心(外来あり)」「在宅専門(外来なし)」は合計8.2%に過ぎません。

 

この調査から見えるのは現在のわが国の在宅医療は、いわゆる町医者と呼ばれる小規模クリニックが、外来診療の合間に在宅医療を行っているケースが大多数を占めているということです。

在宅医は「1人」で「50代以上」が最多

医師の仕事は、人の命を預かるもので重い責任を伴います。そこで医師には、患者が求めるときは正当な理由なくこれを断ってはならない、という「応招義務」が課せられています。このために病院では複数の医師がシフトを組んで夜間や休日も診療をしていますし、在宅医療でも24時間の対応が重視されています。

 

『自宅で死を待つ老人たち』より
[図表1]訪問診療の実施時間帯 『自宅で死を待つ老人たち』より

 

しかしながら現実問題として医師が1人の場合、24時間対応をするのは非常に困難です。

 

先の調査では各施設の在宅医療に従事する医師数は「1人」が最多で、全体の72.4%を占めています。特に機能強化型でない在支診や届け出なしの施設では、ほとんどが医師1人体制です。

 

しかも、在宅医(常勤)の年齢は、60代が最多の32.4%です。次いで50代が30.7%、70代以上が15.9%です。50代以上でほぼ8割を占めています。

 

『自宅で死を待つ老人たち』より
[図表2]在宅医療に従事する総医師数別割合 『自宅で死を待つ老人たち』より

 

『自宅で死を待つ老人たち』より
[図表3]常勤医師の年齢構成 『自宅で死を待つ老人たち』より

 

60代、70代といえば一般社会では定年を迎え、現役を退く人が大半です。世間では働き方改革が進められる時代に、高齢になった医師たちに1人で24時間休みなく働きなさい、というのはどう考えても無理があります。

 

小規模の在宅医療クリニックで24時間体制を確立するために、どうすればいいかは各地の行政も頭を悩ませています。練馬区でも地域の複数の在宅医が連携し、輪番制で夜間・休日の対応をするべく検討したこともありますが実現はしていません。

 

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    ※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    自宅で死を待つ老人たち

    自宅で死を待つ老人たち

    大城 堅一

    幻冬舎メディアコンサルティング

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