業務プロセスの改善は「入り口から順番に」
■プロセス改善は入店>退店の優先順位で行う
解決策や一手間ができたタイミングで、店舗内で実践しましょう。
これまでは入店から退店までどんなストレスをお客様に与えてきたのか、という視点を持って仕事をしてきたわけではないので、思いのほか実際に店頭で顧客ストレスを取り除いたはず、と思っても「全然だめだ……」と反省をする店長やスタッフが多いです。
何事もそうですが、机上で考えるのと実際に店舗で取り組むのとでは違い、スムーズにいかないことの方が多いです。
例えばあるクライアントは、「朝礼でハキハキとした声で入店挨拶を唱和する」と決めたのですが、店長がいない日は実施されていなかったり、解決策だと思って仕組み(呼び鈴をつける)を取り入れたはずなのに鳴っても挨拶をしていなかったり、という結果になることも少なくなかったそうです。
「仕組みや教育を通してストレスを排除したい!」と思って構築したのに、思うような結果にならない……というのは、仕組みや教育に問題があるのではなく、前提となるスタッフとの信頼関係に問題があると言えます。
店長がこれまで培ってきた「信頼関係のあゆみ(成績表)」のようなものです。たとえうまく機能しなくてもここから変わっていけばよいのです。
研修やワークショップでプロセスを10個作り、ストレスも3つずつ出して、事前解決も完了。一手間も全スタッフで共有済み、そうしてもすべてがうまくいくことはないので、机上のアイデアを実践して、チューニングしながら確実に現場に落とし込む改善習慣が必要です。
そこで私は一つのルールを店舗に投げかけます。それは「入り口から順番に」です。なぜなら入店から退店のプロセスの後半(6〜10)を最適化してもプロセスの前半(1〜5)が最適化されていなければ客単価・成約率は向上しないからです。
一番わかりやすい例が、アパレルでよくある失敗パターンです。
店舗内でプロセス・ストレスフリー・解決策・一手間を検討したのち、実行に移したのですが、「声かけ(前半)」と「クロージング(後半)」がうまくいかなかったそうで、クロージングを強化したそうです。
これで成約率や客単価が向上したかというとほぼ変わりませんでした。なぜなら、声かけで失敗しているので、多くのお客様が店舗から出て行ってしまっていたからです。
一度は経験したことがあるかもしれませんが、「よろしければ着てみてください」や「羽織ってみてください」のフレーズに嫌気が差して店舗を後にしたことはありませんか。
声かけの時点で失敗して退店されてしまっているのに、クロージングを磨いたところで、改善テストをするにもチャンスが巡ってきません。
だから、入店から順番に最適化するのです。
必ず出番がやってくるところから、「このやり方にしてみよう」「言い回しを変えてみよう」とあの手この手を試してみて、一番お客様が次のプロセスにスムーズに移行した解決策と一手間を取り入れていくことが得策です。これが一番早く顧客感動を作る手順となります。
一番苦手なことから着手してしまいがちなので気をつけましょう。