(※写真はイメージです/PIXTA)

超高齢社会の昨今、自宅で診察や治療が受けられる「在宅医療」のニーズは高まるばかりです。しかし、経験不足や人員不足をはじめ、医師側の医療体制には問題点がいくつもあると、ねりま西クリニックの大城堅一院長はいいます。複数のデータと筆者の経験をもとに、在宅医療の現状と問題点についてみていきましょう。

「1人で24時間患者対応」の限界

実は私自身も1人で24時間対応を行っていた時期があります。

 

私の場合2011年の開業当初から、在宅医療に取り組む以上は24時間対応を大切にしたいと考えてやってきました。当時、日中は外来診療、訪問診療を行いつつ、夜間の往診は1人で対応していました。

 

当初私は電話で呼び出されて往診に行くのも、それほど大変という思いはありませんでした。

 

もちろん急な呼び出しに応じるのは決して楽ではありません。1日の勤務を終え、自宅に車を停めようとしたところで電話が鳴る。夜間には、眠りに落ちた直後に電話で起こされる。休診日にスポーツジムに行きマシンを使い始めた瞬間に電話が鳴る。そういう具合でしたから、自分のプライベートがかなり犠牲になるのは事実です。

 

しかしいったん患者の元へ行けば、私の顔を見るだけで患者本人や家族がホッとするのが分かります。高齢者や介護をする家族は、何かあれば命に関わるという不安を抱えています。医師が自宅に出向いて「大丈夫ですよ」と声を掛けるだけでも大きな意味があります。

 

私自身は医師として患者のために最善を尽くしたいという思いがあり、夜中に叩き起こされても、患者の求めに応じられている喜びを感じながら往診に行っていました。

 

ただしそれは開業当初の患者数が少ない時期だからこそできたことでもあります。当初の利用者は数十人からスタートして年々患者が増えていき、それでも300人弱まではなんとか対応ができていました。

 

しかし300~400人という規模になると、1人で対応をするのは次第に困難になってきます。最も多いときは2日に1回は夜間の往診が入るようになり、さすがに体力的に限界を感じるようになりました。実際に体調も崩しましたし、私が疲労困憊している様子を心配し、周囲の人にも往診をやめるよう諭されたほどです。

 

結果的に、24時間対応は医師1人では続けられず、複数の医師の連携が欠かせないと実感しました。

 

 

大城 堅一

医療法人社団星の砂 理事長

ねりま西クリニック 院長

 

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※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

自宅で死を待つ老人たち

自宅で死を待つ老人たち

大城 堅一

幻冬舎メディアコンサルティング

最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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