超高齢社会・日本に不可欠な「在宅医療」…普及が進まない4つの理由【医師が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

令和3年版高齢社会白書(全体版)によると、日本の高齢化率は28.8%、2036年には33.3%まで上昇する見込みです(令和2年10月1日時点)。こうしたなか、医療費、社会保障費の増加が国の財政を圧迫していることもあり、医療費や病床削減の受け皿として「在宅医療」に期待が寄せられています。しかし、ねりま西クリニックの大城堅一院長によると、在宅医療の普及は現状一向に進んでいないといいます。それはなぜか、みていきましょう。

行政が期待するほど、進んでいない在宅医療

私のクリニックがあるのは東京都練馬区です。

 

練馬区の人口は74万人余りで東京23区のなかでも世田谷区に次いで2番目に人口の多い区です。全区民のうち65歳以上は16万人以上に上り、高齢化率も21%を超えています(2022年1月時点)。

 

多くの高齢者を抱える練馬区も介護が必要な高齢者を地域で支えるために、在宅医療の体制整備を急いでいます。そのために地域の医療関係者や有識者による話し合いや、在宅医療導入のための研修セミナーなどを行っています。

 

私も区役所や製薬会社、医療経営コンサルタントなどの方々から在宅医療の講演依頼がよくあります。在宅医療の進展や地域貢献のためになるなら、という思いで協力をしています。

 

ところが現実には行政が期待するようなペースで在宅医療の普及が進んでいるわけではないのです。これはおそらく練馬区だけの問題ではありません。特に多くの人口を抱える大都市圏ではどこも似たような状況ではないかと想像します。

 

それではなぜ在宅医療の普及が進まないのでしょうか。

 

私がこれまで在宅医療に携わってきた経験からいえるのは現在のわが国の在宅医療は制度や運営面、あるいは医師の診療技術・働き方などの面で、さまざまな課題があるということです。

 

在宅医であり、クリニックの経営者でもある私自身が注目している課題を整理すると次の4点が挙げられます。

 

①在宅医療の担い手の不足

②在宅医療の診療内容のばらつき

③医師同士や多職種との連携の難しさ

④在宅看取りばかりを重視する風潮

 

在宅医療の担い手の不足

最初に注目したい課題は、在宅医療の担い手の不足です。国は高齢者の急増に対応するべく、「在宅療養支援診療所(在支診)」や「在宅療養支援病院(在支病)」「機能強化型在宅療養支援診療所(機能強化型在支診)」といった制度を整備し、在宅医療を担うクリニック、病院を増やそうとしてきています。

 

しかし図表1を見ると分かるとおり、在支診の施設数は思ったほど伸びていません[図表1]。

 

『自宅で死を待つ老人たち』より
[図表1]在宅療養支援診療所数 『自宅で死を待つ老人たち』より

 

厚生労働省の各種資料によると、在支診の施設数はここ数年、1万4000施設ほどです。在支診の制度ができた2006年から10年ほどは微増傾向にありましたが、それ以降は減少傾向となっています。

 

機能強化型在支診が創設された2012年以降は機能強化型のクリニックが増えましたが、在支診施設の総数は頭打ちになっています。2018年時点で、一般診療所のなかで在支診が占める割合は13%にとどまっています。

 

在支病のほうは、図表2のグラフでは右肩上がりで増えていますが、2018年時点の届け出数は約1300施設です。一般病院全体に占める割合は15%に過ぎません[図表2]。

 

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[図表2]在宅療養支援病院数『自宅で死を待つ老人たち』より

 

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    医療法人社団 星の砂/ねりま西クリニック 理事長/院長

    1966年生まれ。沖縄県出身。大学卒業後、大学病院や関連病院で研鑽を積み、離島にて無医村での診療を経験。2005年より在宅医療に携わる。
    その後、医療・介護の融合をめざし、2011年にねりま西クリニックを開業。離島医療や在宅医療での経験を活かし、患者一人ひとりの希望に合わせた総合的な医療を提供している。

    著者紹介

    連載離島にて無医村での診療も経験した医師が提言!新たな在宅医療のロールモデル

    ※本連載は、大城堅一氏の著書『自宅で死を待つ老人たち』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    自宅で死を待つ老人たち

    自宅で死を待つ老人たち

    大城 堅一

    幻冬舎メディアコンサルティング

    最期まで充実して「生きる」ために 超高齢社会における在宅医療の 新たな可能性を説く―― 在宅医療は“ただ死ぬのを待つだけの医療"ではない。 患者が活き活きと自宅で過ごし、 外来と変わらない高度な医療を受けられ…

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