(※写真はイメージです/PIXTA)

環境的要因と遺伝的要因から最適な治療を導き、医療の質を向上させる新たな概念である「ペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)」は、従来の標準化された治療方針では見落とされてしまう、遺伝情報や患者個々の出身地や生活歴などの背景を考慮した治療を行うものです。東大病院に勤務後、現在は年間10万人を超す外来患者が殺到する眼科病院の理事を務める眼科医・宮田和典氏が、次世代医療の要と成り得る「ペイシェント・ベイスド・メディスン(PBM)」について詳しく解説します。

自身の研究テーマに固執せず、広く多くの医師が使える治療法を生み出す

「患者を治すための研究をする」

 

このように明確な目的を持つと、自ずと研究のテーマが変わってきました。それまでは角膜や内皮細胞などを専門にしていたものが、少しずつ感染症などの病気に変わっていったのです。それは私の病院の患者の多くが眼感染症に苦しんでいたからです。

 

研究者はややもすれば自分自身の研究テーマに固執しがちです。しかし私は臨床医のテーマは柔軟に変化させてもよいと考えています。なぜなら医師が研究をする最大の目的は「患者の病気を治すこと」だからです。

 

これ以外に研究をする理由など、どこにもありません。自分自身の研究テーマに固執するより、広く多くの医師が使える治療法を生み出す方が、はるかに多くの患者を救うことができます。

 

一人の医師が治せる患者の数などたかが知れています。ならば多くの医師が活用できる普遍的な治療法を編み出した方が、結果的に何万人もの患者を救うことができるはずです。

光学や病理、感染症など多彩な専門家が研究に没頭できる環境を提供

PBM、自分の患者にとって最適なエビデンスを生み出すために、私の病院は研究環境を充実させてきました。

 

私の病院は民間の病院ですが、研究に関わる多くの設備を整えており、各分野の専門家や研究員が揃っています。

 

例えば、データを取るための検査員はおよそ30人を数えます。検査員が取得したデータを分析・解析するためには統計解析の専門家がかかわります。

 

また、光学の専門家や、病理の専門家、感染症の専門家、統計・臨床研究の専門家などが揃っています。

 

感染症担当の医師は、国立感染症研究所出身で、私の病院へ来るまでは長崎大学の熱帯医学研究所の教授をしていました。長崎大学の熱帯医学研究所は、日本で唯一の熱帯医学に精通した研究所で、感染症の分野でも多くの先進的な研究を行っています。

 

宮田 和典
宮田眼科病院 理事長
医療法人明和会 理事長

※ 本連載は、宮田和典氏の著書『診断治療の質を上げる ペイシェント・ベイスド・メディスン』(幻冬舎メディアコンサルティング)から一部を抜粋し、再構成したものです

診断治療の質を上げる ペイシェント・ベイスド・メディスン

診断治療の質を上げる ペイシェント・ベイスド・メディスン

宮田 和典

幻冬舎メディアコンサルティング

患者の出身地や食生活によって、かかりやすい病気、重症度が変わる――。 環境的要因と遺伝的要因から最適な治療を導く。医療の質を向上させる新たな概念「PBM」とは? 1990年代にカナダで提唱された「エビデンス・ベイスド…

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