(※写真はイメージです/PIXTA)

令和5年(2023年)の税制は、具体的に何がどう変わるのでしょうか? 令和5年度与党税制改正大綱より、影響の大きそうな4項目をピックアップして見ていきましょう。板山翔税理士がわかりやすく解説します。

 

――令和5年の税制ってどう変わるんですか? 税制改正大綱が発表されたというニュースを見ましたが、そのとおり変わるのでしょうか?

 

板山翔税理士:「いえ、税制改正大綱はたたき台のようなものですので、そのとおり改正されるとは限りません。とはいえ、大綱のとおり決まることも多いので、影響が大きそうなところだけピックアップして解説しますね。」

ついに発表された「令和5年度与党税制改正大綱」

12月16日に、税制調査会が取りまとめた「令和5年度与党税制改正大綱」が発表されました。

 

NISA拡充やインボイス関連の負担軽減などの改正法案が盛り込まれましたが、「そもそも税制改正大綱って何?」「まだ本決まりじゃないの?」と疑問に思われる方も多いと思います。

 

そこで、税制改正大綱の内容説明に入る前に、そもそも税制改正大綱とは何なのか、これからどのように税制改正が行われていくのかを解説していきます。

そもそも税制改正大綱とは?

税制改正大綱とは、翌年度以降の税制改正の方針をまとめたもの、いわゆるたたき台です。与党の税制調査会が、各省庁から出た税制改正の要望などを取りまとめて作成したものです。たたき台とはいえ、このとおり決まる法案も多く、例年注目が集まります。

 

税制改正大綱が内閣で閣議決定されたあと、それに沿って各省(国税は財務省、地方税は総務省)が改正法案を作成して、国会に提出します。

 

国会で可決されてはじめて改正法案は成立し、改正法に定められた日から施行されます。

改正法はいつ頃スタート?今後のスケジュール

例年通りであれば、12月に税制改正大綱が閣議決定されたあと、1月に改正法案が作成され、2月に国会に提出されます。

 

そこから衆議院と参議院で審議と採択が行われ、3月に可決・成立して公布されます。

 

改正税法は4月から施行されるものが多いですが、審議が長引いた場合など多少前後するときもあります。

令和5年度税制改正大綱の内容

基本的な説明が終わったところで、いよいよ今回の税制改正大綱の内容説明に入ります。全部で137ページある税制改正大綱を全て説明するわけにもいきませんので、影響が大きそうな部分だけピックアップして解説していきます。

 

【①NISA拡充】

●施行時期:令和6年1月

 

●改正内容:一般NISAとつみたてNISAの非課税限度額を大幅に増加させ、非課税期間も無期限にする。

 

●詳しい解説:「つみたてNISA」は非課税限度額年40万円、非課税期間20年でしたが、新たに作られる「つみたて投資枠」は非課税限度額年120万円とつみたてNISAの3倍になり、非課税期間も無期限となります。

 

「一般NISA」は非課税限度額年120万円、非課税期間5年でしたが、こちらも新たにできる「成長投資枠」は非課税限度額が240万円と2倍になり、非課税期間も無期限となります。

 

また、つみたてNISAと一般NISAはどちらか一方しか使えませんでしたが、つみたて投資枠と成長投資枠は併用可能で、一生涯で合わせて1,800万円の非課税限度額が設けられています。

 

「貯蓄から投資へ」の流れを加速するのが目的だそうですが、非課税にしてしまうと資産所得が倍増しても税収は増えませんし、直接的に景気を良くするものでもなさそうです。

 

年金などの社会保障費が増やせない分、非課税枠を増やして、自主的な資産形成をサポートするのが主な狙いでしょう。

 

【②インボイス発行事業者となる免税事業者の負担軽減】

●施行時期:令和5年10月から

 

●改正内容:免税事業者がインボイス発行事業者になった場合の消費税の納税額を、「売上税額の2割」に軽減する3年間の負担軽減措置。

 

●詳しい解説:簡易課税と似たような計算方法になり、例えば売上が550万円(内税50万円)だった場合の消費税の納税額は、50万円×20%で10万円となります。

 

簡易課税のさらに簡易版のようなものを作って、インボイス発行事業者を増やすのが狙いなのかもしれませんが、あまり選択肢を増やしすぎるとさらに混乱を招く懸念もあります。

 

【③防衛力強化の財源確保】

●施行時期:令和6年以降の適切な時期(未定)

 

●改正内容:防衛力強化の財源確保のため、法人税、所得税、たばこ税について次の増税を行う。

 

A. 法人税…法人税額に対して4%~4.5%の新たな付加税を課す。法人税額が500万円を超える部分に課されるため、法人税額が500万円以下の法人には影響はない。

 

B. 所得税…所得税に対して1%の新たな付加税を課す。その代わり復興特別所得税の税率を2.1%から1%引き下げて1.1%とし、課税期間を延長することによって復興の財源は確保する。

 

C. たばこ税…1本につき3円引き上げる。

 

●詳しい解説:中小企業で法人税を500万円以上支払っているところは少ないでしょうし、所得税の付加税も、しばらくはすでに支払っている復興特別所得税2.1%の内訳が変わるだけなので、それほど負担感は感じないでしょう。

 

ただ、負担感を感じさせないように新しい種類の税金を増やしていった結果、税金の種類が約50種類にもなって税制がどんどんややこしくなってしまっていますので、個人的にはあまり種類は増やしてほしくないのですが…。残念ながら今後もこの流れは止められないのかなと思います。

 

【④生前贈与加算の期間を7年に延長】

●施行時期:令和6年1月以降の贈与

 

●改正内容:これまで相続開始前3年以内に行われた贈与については、相続財産に加算することとなっていたが、これを7年に延長する。ただし、延長した4~7年前に贈与された財産については、合計金額から100万円を控除する。

 

●詳しい解説:贈与税は基礎控除が110万円であるため、年間110万円以下の贈与なら贈与税がかからないので、相続対策として、子供に毎年110万円を贈与することがあります。

 

例えば子供2人に110万円ずつ贈与するケースなら年間220万円(110万円×2人)まで無税で贈与できますが、これまでは相続時に相続開始前3年以内の贈与額660万円(220万円×3年間)について、相続財産に加算されました。

 

改正後は、同様のケースでも相続開始前7年以内の贈与額1,540万円(220万円×7年間)が加算対象となりますが、4~7年前に贈与された財産から100万円控除されるため、相続財産として加算される金額は1,440万円となります。

 

この改正があれば、毎年110万円ずつ贈与する相続対策が使いにくくなることは間違いなさそうですね。

 

税制改正大綱の内容説明は以上です。

 

まだこのとおり改正されるとは限りませんが、何かと話題になりますし、今後の流れを読むためにも、大体のイメージだけはつかんでおきましょう。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。

 

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