「ペイドメディア>オウンドメディア」の風潮に変化
かつてホームページは単なる集客やPRの手段に過ぎませんでした。しかし、今では多くのことがホームページで実現できるようになっています。例えば自前のECサイトを創設している企業もあれば、顧客にマイページを用意して長期的に有益な情報を提供することで関係を深めている企業もあります。
ホームページの重要性が認識されなかったのは、従来型のメディアである企業が費用を払って広告を掲載するペイドメディアの影響力が要因の一つだと私は考えています。ペイドメディアは知名度があり集客力が段違いに高いため、中小企業の個別のホームページでは太刀打ちできません。ペイドメディアに参加することで露出の機会が格段に増え、新たなビジネスチャンスも増えるため、比較的短期間で効果を得やすいというメリットがあります。
現在はホームページよりもECサイトや就職情報サイト、見積比較サイトといったペイドメディアに多くの中小企業が依存しています。
しかし長期的な企業の成長を目指していくには、こうしたプラットフォームへの依存が大きな足かせになります。
ECサイトの「売上は上がるが、収益は上がらない」構造
以前、ECサイトが販売手数料を数%引き上げたことがありました。そのとき、出店していた多くの企業が撤退に追い込まれました。販売手数料を引き上げられると利益が出なくなってしまうからです。
こうしたECサイトに対しては、数百万円の広告費を掛けて露出を増やしてみませんかといった営業活動が行われるのが一般的です。実際に広告を出すと確かに売上は上がります。しかし、最終的に計算してみるとまったく利益が出ないというのもよく聞く話です。プラットフォームを利用すると、売上は上がるけれども収益は上がらないという構造になっているのです。そこで自社のホームページである自前のECサイトで商品を販売して適正な収益を確保する道を選ぶ企業が増えています。
就職情報サイトの限界
就職情報サイトについてもさまざまな問題があります。就職情報サイトはいったいいくつあるのか分からないほど乱立している状態です。そのため求職者が分散してしまい、効果も薄れてしまいます。
また、いくつかの就職情報サイトを見ると分かるのですが、どの企業ページの写真を見ても、社長が腕を組んで写っていたり、社員の集合写真が並んでいたり、会社説明のページも同じような内容になっていたりします。企業の特長をアピールするページなのに差別化できていないのが就職情報サイトの抱える問題です。就職情報サイトは多くの企業が利用するプラットフォームのため、表示するページのフォーマットを標準化しなければなりません。
そうした状況に限界を感じて、自社のホームページに軸足を移している企業も増えています。企業のホームページをいくつか見ていると、人材採用専用のサイトを用意している企業が多いことが分かります。独自性を出して企業の良さを訴求するのは、自社のホームページ以外ではできないからです。求職者もそれをよく分かっていて、まず就職情報サイトを見て企業の存在を知ったら次にその企業のホームページを見ています。どんな雰囲気の会社なのか、自分に合った働き方ができるかといったことは、ホームページを見たほうがよく分かるからです。
自社ホームページは長期的に運営するほどメリット
自社のホームページであるオウンドメディアを強化していくメリットは、長期的に運営すればするほど成果だけでなく収益も上がり、他社と差別化できるということです。オウンドメディアはホームページ制作の初期費用こそかかりますが、そのあとのホームページの改善などの運営費用は就職情報サイトなどを利用するよりも格段に抑えることができます。
オウンドメディアであれば、自らが工夫して生み出したコンテンツが蓄積されていき、試行錯誤して改善を積み重ねた結果、獲得したノウハウが残ります。社内の体制を整備すれば、いくらでも改善のスピードを速めることができます。私が支援した企業のなかには、月に数回のホームページ改善を続けている企業もあります。
浜野 耕一
株式会社コウズ 代表取締役