(※画像はイメージです/PIXTA)

2022年12月16日に与党の2023年度税制改正大綱が発表されました。そのなかに、法人のいわゆる「節税」「決算対策」として40年近くにわたり広く行われてきたポピュラーな「節税方法の定番」ともいえる方法を封じるねらいがあるのではないかという「ある記述」があり、波紋を呼んでいます。本記事では、その記述の内容が意味するところと、そこから推察されるねらい、および問題点について解説します。

◆オペレーティングリースへの出資が「計画納税」に資するしくみ

計画納税のメリットがあるといわれているのは、オペレーティングリースの「賃貸人」へ出資することです。以下の順番で行われます。

 

1. 複数の「出資者」が「匿名組合」のしくみを用いて「賃貸人」(法人)に共同出資する

 

2. 「賃貸人」が「出資者」からの出資額とは別に金融機関から多額の融資受ける

 

3. 「賃貸人」が「出資者」の出資額と金融機関からの融資額をあわせて物件(船舶)を購入する

 

4. 「賃貸人」が「賃借人」(船会社)に物件(船舶)を貸し出し、賃料を受け取る

 

5. 「賃貸人」が毎期末に「出資者」に損益を分配する

 

6. リース期間中、「賃借人」が「購入選択権」を行使して物件を買い取る(リース終了)

 

7. 「賃貸人」が「賃借人」から受け取った代金額を「出資者」に分配する

 

8. 「出資者」が分配を受けることにより出資金の100%前後の額を回収する(益金に算入

 

最初に登場する「匿名組合」という言葉は耳慣れないかもしれません。ここでは、「複数の出資者がいて、お互いに他の出資者が誰なのか知らないままに出資できるしくみ」というイメージを持っていただければ十分です。

 

出資者にとって「計画納税」に資するのは、『5. 「賃貸人」が毎期末に出資者に損益を分配する』の段階です。

 

「賃貸人」において、物件の購入代金について「減価償却」を行い、そこで初年度に多額の減価償却費(損金)が計上されます。これがリース料による収入(益金)を大きく上回ることによってマイナスが発生し、そのマイナスが「出資者」へと分配されるのです。

 

これにより、「出資者」においては、初年度に出資額の60%~80%程度の額の「損失」(損金)を計上することができるのです。そして、リース物件が買い取られて代金の分配を受けるまでの間、「利益の先送り」すなわち「計画納税」が実現することになります。

 

この「計画納税」のスキームこそが、俗に「オペレーティングリース節税」といわれるものです。

 

◆ポイントは「多額の減価償却費」による「レバレッジ」

なぜ、初年度の減価償却費が大きくなるのでしょうか。ここで思い出していただきたいのが、「賃貸人」が物件(船舶)を購入する際に、「出資者」からの出資総額に加えて金融機関から多額の融資を受けるということです。

 

物件の価格が大きければ、そのぶん、減価償却費も大きくなります。「レバレッジ」がきくということです。

 

◆船舶は「特別償却制度」でさらに初年度損金率が高くなることも

しかも船舶のオペレーティングリースにおいては、物件(船舶)の条件によっては「特定船舶の特別償却制度」の適用を受けられることがあります。本記事では詳細には立ち入りませんが、初年度に通常の減価償却よりも多額の減価償却費を計上することが認められるものです。

 

したがって、船舶のオペレーティングリースに出資すると、航空機等へのオペレーティングリースと比べ、さらに大きな額の損失(損金)を計上できることがあるのです。

 

航空機のオペレーティングリースに出資した場合は初年度損金率がせいぜい60%~70%程度なのに比べ、船舶のオペレーティングリースに出資した場合は損金率が80%~90%程度に達することもあります。

 

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