(※写真はイメージです/PIXTA)

亡き両親の相続の際、遺産にお墓が含まれているケースもあると思います。お墓の相続はどのように行うのか、また、お墓が不要な場合はどのようにして手放せばいいのか、お墓にまつわる支払いや様々な手続きを見ていきます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

親が所有していたお墓…相続手続きはどうなる?

生徒:亡くなった親はお墓を持っていたのですが、この相続はどう進めたらいいのでしょうか?

 

先生:大まかにいうと4段階あります。

 

①祭祀承継者を決める

②お寺へ連絡をする

③名義書換をする

④手数料を支払う

 

この順番でおこないます。

 

生徒:大変そうですね…。①の「祭祀継承者」とはどのようなものでしょうか?

 

先生:お墓を管理したり、お寺に対して管理費やお布施を払ったりする人のことですよ。

 

生徒:お寺に費用を支払うのですね。②のお寺への連絡はどうすればいいのでしょうか?

 

先生:祭祀承継者が、お寺に相続が発生したことを連絡します。お寺や霊園ごとに書式や対応などが異なりますが、基本的にはいわれた通りに従っておけば問題ありません。

 

生徒:なるほど…。では、③の名義書換とはどういった手続きをおこなうのですか?

 

先生:お墓の名義書換には必要書類がいくつかあるのですが、「墓地利用権の証明書」「祭祀承継者の印鑑登録証明書」「前の祭祀承継者が亡くなった事実が分かる戸籍謄本」などを用意し、それらを提出すればいいですね。

 

生徒:④の手数料ですが、これは何に対する手数料でしょう?

 

先生:名義変更の手数料です。「民営墓地・公営墓地」といった形で金額が異なります。

 

生徒:手数料って、一体どのくらいかかるものでしょうか…?

 

先生:民営の墓地の場合であれば数千円から1万円、公営の墓地の場合であれば、数百円から数千円程度といわれています。場合によっては、お布施を包むケースもあるかもしれません。もし分からなければ、お寺に直接聞いてみたほうがいいですね。

 

生徒:なるほど…。ところで、祭祀継承者は誰でもなれるのですか。

 

先生:基本的には、亡くなった方が、相続の前に指定された人となります。地域などの慣習で決めることや、家庭裁判所が決めることもあります。

 

生徒:生前に指定しておくのですね。口頭で指定しても大丈夫ですか?

 

先生:文章のほうがいいですが、口頭でも可能です。しかし、口頭だと「言った・言わない」などのトラブルが起こるかもしれませんから、できれば遺言書に書いておくほうがいいですね。

 

生徒:祭祀継承者は、やはり長男や長女がなるべきなのでしょうか。

 

先生:昔は祭祀承継者を長男が引き継ぐという慣習が日本中に見られましたが、今はあまり残っていないようです。そのため、亡くなった方からの指定がとくになく、地域の慣習もない場合には、家庭裁判所に申立てをおこなうことになります。

 

生徒:家庭裁判所はどのように祭祀承継者を指定するのですか?

 

先生:家庭裁判所は、過去にどういった生活をしていたか、お墓との距離がどれくらいか、身分の関係がどうなっているのかなどを考え、決定しているようです。

 

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お墓を相続しない・相続放棄することは可能か?

生徒:お墓を相続したくない場合、お墓を相続しないことや、相続放棄してしまうことは可能でしょうか?

 

先生:祭祀継承者となることを辞退したり断ったりすることはできませんが、祭祀継承者が相続したあとでお墓を処分することは可能でしょう。そのため、「墓じまい」という形をとれば、いったん相続しても、手放すことができます。

 

生徒:墓じまいという方法もあるのですね。

 

先生:お墓の管理はかなり大変ですし、費用もかかります。お墓が遠方なら墓参りにも時間がかかりますし、継続的なお手入れも難しいかもしれません。放置すれば荒れ放題になりますから、そういった場合はいっそのこと、墓じまいをするのも手かもしれません。

 

生徒:墓じまいしたあとは、どうすればいいのでしょうか?

 

先生:墓じまいのあとは「永代供養」という形で、お寺や霊園に管理を任せることができます。「永代」という響きから、寺や霊園にずっと管理をしてもらえると勘違いをされる方がいますが、一定期間だけ管理してもらったあとは、お墓を撤去することになります。

 

生徒:お寺にずっと管理してもらうことはできないのですか?

 

先生:基本的には、永代供養は33回忌までと期間が決まっていて、期間終了後は、ほかの遺骨と一緒にされてしまうことが多いです。遺骨が一緒にされてしまうと、その後は遺骨を取り出すことができなくなるので、親族や家族の意見を聞きながら進めていくのがいいでしょう。

 

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お墓の永代供養…費用の目安は?

生徒:お墓の永代供養の費用って、いくらかかるものでしょうか?

 

先生:永代供養のお墓には、大きく分けて3通りあるんです。「単独墓」「集合墓」「合祀墓」です。

 

生徒:費用に違いはありますか?

 

先生:所有する面積が大きいほど高額になります。基本的には、いちばん高額なのが単独墓、その次が集合墓、最も安価なのは合祀墓です。お墓の購入費用とは別に支払うことになる「永代供養料」については、どれを選んでもほぼ同じです。大まかな予算として、5万円から200万円くらいまでだと考えておけばよいでしょう。

 

生徒:永代供養にした場合、維持費はかかりますか?

 

先生:永代供養であれば、維持費はかからないと考えてよいでしょう。最初に一括で永代供養料を払ってしまえば、あとからの請求はありません。

お墓に「相続税がかからない」ワケ

生徒:お墓に相続税はかかりますか?

 

先生:お墓には相続税はかかりません。相続税は、亡くなった人から遺産を受けたときにかかる税金ですよね。お墓はほかの財産と違って、先祖をおまつりする財産といわれています。先祖をおまつりする財産には、税金がかからないと決められているのです。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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