(※写真はイメージです/PIXTA)

大切な親族が亡くなり、相続が発生…。その瞬間から、親族は非常にあわただしい時間を過ごすことになりますが、そのなかで、葬儀や火葬許可申請書の提出など、遺族がおこなうべき手続きは多数に及びます。具体的な流れを見ていきます。自身もFP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

火葬の手続き…「火葬許可申請書」はどこへ提出する?

生徒:親族が亡くなって死亡届を出したあとは、火葬の手続きを進めるそうですが、その際に「火葬許可申請書」が必要だと聞きました。これはどんな書類なのですか?

 

先生:火葬許可申請書とは「火葬許可証」の交付に必要な書類です。亡くなった方の火葬をおこなうには火葬許可証が必要なので、火葬許可申請書を提出して火葬許可証を発行してもらうのです。

 

生徒:どこに申請するのでしょう?

 

先生:火葬許可の申請書は、原則としては死亡届と同時に、市町村役場へ提出することになっています。

 

生徒:火葬許可の申請書は、いつまでに提出しなければいけないのですか?

 

先生:提出期限は死亡届と同じで、亡くなった日から7日以内です。なお、病院で看取られず亡くなった場合には、法律上は、死亡を知った日から7日以内となっています。また、海外で亡くなった場合は3ヵ月以内となっています。

 

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いよいよ葬儀だが…葬式費用はだれが負担するの?

生徒:葬儀なのですが、必要な費用はだれが負担するか決まっているのでしょうか?

 

先生:負担する人については、とくに法律で決められているわけではありません。一般的には、喪主が支払うことが多いようです。

 

生徒:葬儀のあともまだ、やるべき手続きが多く残されているのでしょうか…?

 

先生:葬儀のあとに遺族がおこなわなければいけないこととして、法的な手続きと法要があります。葬儀後の法要スケジュールは、宗派や慣習により違いがありますが、仏教の多くの宗派では、葬儀後に法要が営まれます。

 

生徒:法的な手続きだけではなく、法要も「やるべきこと」に含まれているんですね。具体的には、どのようなものがあるのでしょう?

 

先生:まず、亡くなってから七日後に営まれる「初七日」という法要をいいます。最近では、葬儀や告別式と同日にすませる場合も増えています。初七日までにおこなう必要のある手続きとしては、

 

①死亡届の提出

②病院及び葬儀業者への経費の支払い

③亡くなった方が当事者となっている契約の解約・変更

④遺言書の有無の確認

⑤年金受給停止手続

 

の、5つです。とくに「死亡届の提出」は、速やかにおこなう必要がありますね。

 

生徒:病院や葬儀会社への費用の支払いはいつまでにすればいいのでしょう?

 

先生:病院及び葬儀業者への支払いは、葬儀を無事終えたら速やかにおこないます。葬儀の翌日までには、病院への支払いをおこないましょう。葬儀会社は、当日精算の会社もあれば、後日請求書で支払う会社もあるので、それに従いましょう。なお、葬儀費用は、相続税の計算では控除の対象となるため、領収書を保管しておくことが重要です。

 

生徒:ほかの注意点はありますか?

 

先生:亡くなった方が当事者となって結んだ契約は、亡くなった時点で無効になります。しかし、そのままにしていては、契約先は契約者が亡くなったことがわかりません。そのため、亡くなった方の契約先を確認して、不要なものは解約し、引き継いで利用するものは名義変更手続きをおこなうことが必要です。

 

生徒:具体的には、どんな契約があるのでしょうか?

 

先生:たとえば、クレジットカードやローンです。連絡しない限りは支払が続いてしまうので、初七日までには確認しておくことが必要ですよ。

 

生徒:遺言書の有無も確認すべきなのですよね?

 

先生:遺言書の有無の確認は、遺産分割をおこなうために必要なのです。初七日を終えたあと、遺産についての話し合いが始まる前までに確認しておきましょう。公正証書以外の遺言書は、勝手に開封することができません。検認手続きの準備も必要です。

 

生徒:社会保険もありますね。年金の受給停止手続きは、いつまでに連絡すればいいのですか?

 

先生:亡くなった方が国民年金に加入していた場合は、亡くなった日から14日以内におこないます。厚生年金の場合には、亡くなった日から10日以内におこなうことになっています。これらの手続きは、初七日のあとにすぐに期限が来るので、確認しておく必要がありますね。

 

生徒:早めの確認・手続きが大切ですね。

四十九日以降、遺族がおこなうべき手続きは?

生徒:よく聞く「四十九日法要」とはどういうものでしょう? それまでにしなければならない手続きはありますか?

 

先生:いわゆる「四十九日」は、死亡から四十九日後に営まれる法要です。きっちり四十九日後に法要をおこなうのではなく、その前後の週末におこなうケースが多いようです。四十九日で納骨をおこなうことが一般的となっています。その日までにおこなう手続きとしては「生命保険の死亡一時金の請求」「遺品整理」や「形見分け」などです。

 

生徒:どれも時間がかかりそうですね…。

 

先生:生命保険の請求については、請求期限が3年以内になっていることが多いようです。必ずしも四十九日までに請求する必要はないのですが、遺産分割で保険金の分け方を話し合うことがあるため、請求手続きを先におこなっておくと安心です。

 

生徒:遺品も分割の対象になるのですね?

 

先生:遺品整理や形見分けについては、一般的に四十九日ごろにおこなわれることが多いようです。相続に関する話し合いもこの時期ですしね。ただ、後々のトラブルを避けるために、タイミングをずらすこともあるようです。

四十九日法要が終了…その後に必要な法要&手続きは?

生徒:四十九日以降にも必要な手続きはありますか?

 

先生:法律で定められた手続きのなかで、3ヵ月以内におこなう必要があるものは、相続するかどうかの決定です。3ヵ月以内であれば、相続を放棄することができるんです。

 

生徒:そうなんですね!

 

先生:また、4ヵ月以内におこなう手続きとして、「準確定申告」があります。亡くなった方が所得税の申告をしていた場合、医療費控除を受けたでしょうから、必ず準確定申告をおこなわなければなりません。

 

生徒:相続税の申告はいつまでにおこなえばいいのですか?

 

先生:相続税の申告は、10ヵ月以内におこなう手続きです。

 

生徒:あと、法要について教えて下さい。

 

先生:初盆は、亡くなってからはじめて迎えるお盆ですね。お坊さんに来てもらって法要をおこなうことが一般的です。なお、四十九日前にお盆が来た場合は、次のお盆が初盆となります。

 

生徒:初盆のあとの法要はどんなものがありますか?

 

先生:そのあとは、三回忌や七回忌といった形で法要がおこなわれますが、回数を重ねるごとに規模は小さくなっていきます。三十三回忌や五十回忌で終わりとなることがありますが、近年では、そこまで継続するケースは少ないかもしれませんね。

納骨費用、葬式費用として「債務控除」できる?

生徒:四十九日に納骨するのが一般的ということですが、そのときにかかる費用は、相続税の計算上、どんな扱いとなりますか?

 

先生:お寺のお墓に納骨するときの費用は高額になりがちです。でも、葬式をおこなうために必要なので、相続税の計算で控除することが可能です。

 

生徒:相続税を減らす効果があるんですね!

 

先生:そうです。そのため、納骨にかかった費用を証明することができる書類を残しておくことが必要ですよ。

 

生徒:領収証ですね!

 

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関係者への挨拶や香典返しも抜かりなく

生徒:葬儀の直後に喪主がおこなう手続きには、どういったものがありますか?

 

先生:それには、すでに述べた「病院や葬儀会社への費用の支払い」、そして「通夜や葬儀でお手伝いをしてくれた方、亡くなった方の職場のみなさんといった、関係者へのあいさつ」「香典返しの手配」の3つがありますね。

 

生徒:まずは病院や葬儀会社への支払いでしたね。関係者への挨拶はどのようにおこなえばいいのですか?

 

先生:通夜や葬儀でお手伝いをしてくれた方や職場の方への挨拶についても、葬儀の翌日から初七日までにすませることが一般的です。亡くなった方の職場へ挨拶に伺うときには、職場から借りているものや職場に残しているものを返却したり、取り寄せたりする必要があります。

 

生徒:香典返しは、どのようにおこなえばいいのでしょうか?

 

先生:香典返しは「半返し」が目安とされています。受け取った金額の半分程度の品物を、香典返しとして贈ります。四十九日の忌明けに香典返しを贈ることが一般的でしょう。必ずしも葬儀の直後におこなう必要はありませんが、葬儀の直後に取りまとめておくとよいでしょう。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

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