社内外のコミュニケーションが低下…
コロナ禍を受けてリモートワークが増え、運動や外出機会、社内外のコミュニケーションが減っていると言われています。働き方の変化に伴い、自社オリジナルの体操やストレッチなどをつくって社員みんなで健康づくりをしようという試みが増えています。心身の疲労を癒すことはもちろん、経営管理の面でも重要な社員の健康増進、転倒や怪我などの労災事故防止の効果があるためです。共通の運動を通じて、コミュニケーションの向上を図ろうという狙いもあるようです。
第四回目の今回は、自社オリジナル体操やストレッチを新たに採用する企業の事例と、体操が復活してきた現代特有の事情を紹介します。
ラジオ体操からオリジナル体操へ
自社オリジナル体操は、一般的なラジオ体操と違い、会社それぞれの業務内容に合わせて的確な柔軟や運動を取り入れられるのが特徴です。
例えば、IT企業のシステムエンジニアであれば目や肩、腰に負担がかかりやすいといった具合です。忙しくてまとまった時間を取れないという従業員が多い企業では、3分以上の時間がかかるラジオ体操を一斉に実施するのは難しいものです。こうしたケースでは、30秒しかかからないオリジナル体操を作り、それぞれが始業前、昼食後、会議前などの隙間時間を活用すれば良いわけです。当社(イーヤス)でも、クライアント企業のオリジナル体操を制作するサービスを実施しています。
当社のクライアントで、システム開発に携わるR社は、以前は始業前に一般的なラジオ体操を実施していました。ところが、真剣に参加している社員は少数で、効果は乏しかったそうです。
転機となったのがコロナ禍でした。ほとんどの社員が在宅勤務になったことで、外出機会や運動機会の減少により体重が増加した社員が増えたのです。このため、自宅でも体を動かしてもらうことを目的として2022年に新たに自社オリジナル体操を制作しました。
全国の支店にいる900名の社員の一体感を醸成することも狙いでした。社員全員が自社だけの共通の体操をすることで、リモートワークでも会社に帰属している安心感が得られる面があるわけです。この体操は会議の前や社内イベントで実施をしたり、経営層バージョンの動画を制作して社員に浸透しているようです。
在宅勤務による作業環境や生活習慣の急激な変化により、心身の不調を訴える人は増加傾向にあります。2021年の「月間総務」が全国の総務担当者に、「コロナ禍で心身の不調を訴える従業員は増えているか」と尋ねたところ、「増えた」が42.5%を占めたそうです。原因の一つがコミュニケーション不足によるものと考えられています。
社員間のコミュニケーションの醸成を目的に、オリジナル体操を制作した理美容業のD社は、昼礼の時にオリジナル体操を実施しています。人気グループの音楽に乗せて体操をすることで本社の社員はほとんど参加しており、午後からの仕事のモチベーションアップにも役立っているようです。
オリジナル体操を一緒にやることで、「共通の話題が増え、拠点間のコミュニケーション不足の解消にも役立っている」との声も上がっています。