一向に改善されない日本の長時間労働、心労、睡眠障害…「社員ほぼ全員が昼寝」する会社が得た“思わぬ成果”

一向に改善されない日本の長時間労働、心労、睡眠障害…「社員ほぼ全員が昼寝」する会社が得た“思わぬ成果”
(※写真はイメージです/PIXTA)

企業が従業員の健康を気遣い、デジタルデバイスを利用して体調を管理させたり、手厚い福利厚生を設けたりする事例が相次いでいる。少子・高齢化を背景とした人手不足が深刻となっていることや新型コロナウイルスの感染拡大などが背景にある。国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)では、「すべての人に健康と福祉を(目標3)」、「働きがいも経済成長も(目標8)」を掲げている。企業は自社のブランディングの一環としても従業員の健康サポートを充実し、目標を達成しようとしている。この連載では、全国で法人向けの出張マッサージサービスを手掛ける株式会社イーヤス(名古屋市)の遠藤基平社長が、その経験をもとに「健康SDGs」を実践する企業を紹介し、その意義を具体的に解説する。

企業による「昼寝」推進の背景

従業員の仮眠スペースを設けたり、就業時間中に仮眠の時間を設けたりする企業が相次いでいます。昼寝はかつて社員の「サボリ」だとみなされていましたが、現在では睡眠不足の解消や仕事への集中力を高める手段だと理解されるようになってきました。

 

新型コロナウイルスの感染拡大によるストレスや生活習慣の変化から、睡眠障害を訴える社員が増えているのも背景にあります。今回は、「昼寝」にスポットを当てて企業の取組みを紹介します。

生産性向上の“秘策”―外資系企業の「シエスタ」とは?

読者の皆さんは「シエスタ」という言葉をご存じでしょうか。もともとは日照時間の長いスペインで生まれた習慣で長いお昼休憩のことです。「昼寝」を連想する人が多いかもしれませんが、必ずしも昼寝をしなくても、この休憩時間のことをシエスタと呼びます。

 

このシエスタ。かつては「サボリ」の代名詞のようにとらえる人も多くいましたが、現在では欧米の企業がこぞって導入しているのです。理由は従業員の労働生産性の向上です。昼食後の眠気を解消して午後の仕事の生産性を高めるのが目的です。

 

ランチ後の午後の時間、眠気を感じながら無理に仕事をするよりも、適度に仮眠や休憩を取る方が仕事の能率が上がるというわけです。日本企業の一部でも「昼寝制度」などと言い換えられて導入されています。

 

NASA(アメリカ航空宇宙局)の実証実験では、26分間の昼間の仮眠で、認知能力が34%、注意力が54%も向上するという結果が出ています。厚生労働省も午後の早い時間に30分程度の短い昼寝をすることで、眠気による作業効率の低下に効果があると公表しています。

 

また、ある調査によると「1時間を超える昼寝は寿命を縮める」という結果もあり、やはり20~30分程度の睡眠時間を確保するのが一番ベストなのでは

仮眠室を設置、社員が自主的に仕事時間をコントロール

不動産業のM社は、2018年に働き方改革の一環として仮眠制度を設け、社内に仮眠室を設置。昼12~15時の間に、30分まで仮眠室を利用できるようにしています。

 

同社には「労働時間の削減や管理をすることより、社員が自主的に仕事時間をコントロールし、パフォーマンスを発揮してほしい」との考えがあり、仮眠室を設置することにしたそうです。

 

仮眠スペース

 

同社による検証によると、仮眠が仕事の生産性を高めることがわかっています。30分の仮眠を2週間実施し、パソコンのタイピングをする際の集中度を眼鏡型のウェアラブル端末で計測したところ、仮眠を取らない2週間と比べて集中度が高かったそうです。

 

社員アンケートでも利用者の3分の2が「仮眠後は集中力があがった」と回答をしており、制度の効果を感じているそうです。

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