2022年は、アメリカの急速な利上げが金融市場に大きな影響をおよぼしました。今後、利上げはいつまで続くのでしょうか。2023年やそれ以降の政策金利がどうなるのか、世界有数の資産運用会社、アライアンス・バーンスタイン株式会社のシニア・インベストメント・ストラテジスト、荒磯亘氏が予想・解説します。

昨年の金融市場を振り返って

――昨年の金融市場をどう見ていますか?

 

荒磯「根っこには、アメリカの利上げが市場の混乱を招いたことがあると思います。利上げの何がよくなかったのでしょうか。図表1はアメリカの政策金利の推移です。

 

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[図表1]米国政策金利の推移過去の実績や分析は、将来の成果などを示唆・保証するものではありません。
期間:2006年1月~2022年11月
出所:ブルームバーグ、AB

 

ここにFRB(アメリカの中央銀行)が送るメッセージが隠れています。たとえば直近2020年には政策金利が鋭く下がったのがわかります。景気が悪くなるかもしれない、コロナで消費が落ち込むかもしれないというときに金融市場を支えるんだというメッセージがここにあります。

 

ところが、2022年は急速に利上げが進みました。金融市場が多少崩れても気にしない、ほかに大事なことがあるからごめんね、というメッセージがここに込められています」

 

――これまでのFRBの姿勢を期待していた投資家からすると、株価が下落しても金融引き締めの姿勢を変えないというのは驚きですよね。

 

荒磯「そうですね。このグラフは2006年からの推移ですが、リーマン・ショック発生時などはものすごい勢いで利下げをしています。このときのように、金融市場が崩れればそれに対応してどんどん利下げをするというのが、リーマン・ショック以降15年近く続いているパターンです。

 

しかし、今回はどんなにマーケットが荒れても利上げをやめないということで、態度がまったく異なっています。これに対し、マーケットは狼狽し、そして絶望したのだと思います」

 

――アメリカではいったん利上げに踏み切ったかと思ったら、かなり急速なペースで、かつ大幅な利上げを進めている印象です。株価も下落して景気減速も懸念されるなか、利上げはまだ必要なのでしょうか。

 

荒磯「まずはなぜ利上げをしているのかを考えないといけません。アメリカの中央銀行は政策目標が2つあります。1つは物価の安定、つまりインフレ対策です。もう1つが雇用の最大化です。こちらが労働市場の拡大、ひいては景気です。

 

そしていま中央銀行が取り組んでいるのは、この物価の安定のほうです。言葉を変えると、雇用や景気はあと回しということです」

 

――景気が減速してしまったら、給料やボーナスが減ってしまうような気がするのですが。

 

荒磯「そうですね。ただしこれはちょっとトリックがあります。2022年というのは、アメリカの中間選挙の年でした。

 

インフレは全員に影響します。スーパーに行かない人はいません。そして、スーパーにあるものが値上がりしてしまうと、全員に影響するのがインフレです。

 

景気対策、たとえば株価対策をしても、株を持っている人しか助かりません。そこで景気対策、財政対策をしても、インフラや公共事業などの関連産業の人しか助かりません。選挙の年でしたので、できるだけ多くの人にリーチしたいということで、インフレが最優先課題なのです」

 

――より多くの人が恩恵を受けるのがインフレ対策というわけですね。

 

荒磯「そうですね。財政対策や株価対策よりも、全員を苦しめるインフレ対策に、より政治的な注目が集まっていました」

 

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【ご注意】
※本稿は、「【AB’s Market Tips】 #2 アメリカの利上げ、ここからどうみる?」を参考に、再編集したものです。詳細については当該動画をご覧ください。
本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタインポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
当資料は、2022年11月26日現在の情報等を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。
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