インフレは今後どうなっていくのか
――世界的に物価高が起きていて、現在各国の中央銀行は利上げを急いでいます。それによって、株式や債券市場でも混乱が続いている状況です。インフレが落ち着かない限りは利上げも止まらず、金融市場も不安定な状況が続くと思うのですが、インフレは今後どうなっていくのでしょうか。
穂谷「インフレの見通しは非常に難しいです。図表1をご覧ください」
――とても複雑に見えますが。
穂谷「本当はもっと複雑です。インフレは需要サイドと供給サイドが相互に作用します。
需要サイドでは、コロナ禍で未曽有の財政政策と金融緩和政策が打たれ、流動性が高まりました。さらに、金融緩和政策は金利低下を促して、需要の急回復を下支えしました。さらに長期金利低下により、リスク資産にもお金が回って資産効果も上がります。
一方、供給サイドでは、コロナ禍で労働市場が滞り、ロシア・ウクライナ問題や米中関係の悪化などによって製造業などのサプライチェーンも目詰まりが起きました。さらに、脱炭素化の動きが加速してエネルギー価格が上昇しました。
需要が急回復するなか、供給制約が拡大し、両者のギャップによりインフレが高進していく。このような図になっています」
――さまざまな原因が複雑に絡み合って、足元のインフレを生み出しているということですね。
穂谷「そうですね。現在は利上げによって景気が緩やかに減速しているため、今後はおおむねインフレ全体としては落ち着いていく見込みです。
しかし、インフレ率がいつ下がるか、どのくらい下がるかということは、中央銀行のメンバーでさえ見誤っているのが現状です。それほどインフレの予想は非常に難しいです。
また、米国など経済安全保障の観点から、サプライチェーンの見直しはさらに進むことが予想され、構造的にインフレの影響が今後も残ると予想します」