地政学リスク高まるなか、市場への影響は「少ない」?
――イスラエル・パレスチナ問題は歴史的な経緯もあり、沈静化まで長引きそうな様相です。地政学リスクの高まりにより、金融市場、特に株式市場は大幅に下落するのでしょうか。
穂谷「いいえ。結論を申し上げれば、地政学リスクが金融市場を崩壊させた歴史はありません。米国のS&P500株価指数と経済政策不確実指数の推移を比べたチャートをご覧ください[図表1]」

期間:1997年1月~2023年8月。
出所:リフィニティブ、アライアンス・バーンスタイン(以下、「AB」。アライアンス・バーンスタイン・エル・ピーとその傘下の関連会社を含みます。アライアンス・バーンスタイン株式会社はABの日本拠点です。)
穂谷「たしかに地政学リスクを示す経済政策不確実指数が高まるタイミングでは、一時的に株価指数がやや下落していますが、影響は軽微です。
株式市場が大きく下落、ないし長く低迷するときは、むしろ、ITバブル崩壊や世界金融危機、新型コロナウイルス、金利急上昇といった経済的な要因が強く影響しています」
――今回のイスラエル・パレスチナ問題も、金融市場に与える悪影響は少ないといえるのでしょうか?
穂谷「グローバルな規模でマクロ経済に与える影響は少ないものの、ミクロで見ればところどころに影響がみられます。たとえば、イスラエルや中東諸国に生産設備を有する個別企業は、生産活動の停止や撤退といった影響が生じそうです。サプライチェーンや生産供給網について投資先企業の精査が必要です」