2022年は、アメリカの急速な利上げが金融市場に大きな影響をおよぼしました。今後、利上げはいつまで続くのでしょうか。2023年やそれ以降の政策金利がどうなるのか、世界有数の資産運用会社、アライアンス・バーンスタイン株式会社のシニア・インベストメント・ストラテジスト、荒磯亘氏が予想・解説します。

利上げの効果は出ているのか

――では、物価上昇に対する利上げの効果はでているのでしょうか?

 

荒磯「それがまだ十分には出ていないというところです。細かくみると、モノの値段が少しピークアウトしてきた、あるいはそれでも人手不足だから人が行うことの値段は高いままであるなど、違いは出てきています。

 

しかし、大勢として金融政策の転換を促すに足るかというと不十分です。図表2をみてください。青線がアメリカのCPIですが、右端の足元はまだ高い数字にあります。

 

あ
[図表2]ブラジルと米国のCPI前年比過去の実績や分析は、将来の成果などを示唆・保証するものではありません。
期間:2018年1月~2022年9月
出所:ブルームバーグ、AB

 

ところが、世の中にはすでにインフレ対策をアメリカより早くやっていて、効きはじめている国もあります。黄色の線がブラジルのCPIです。足元が下がっているということがわかると思います。

 

ブラジルはアメリカより1年早くインフレ対策利上げを始めた国ですから、利上げがいずれ物価を鎮静させることは示されていて、アメリカもいずれは物価上昇率が下がってくると思います。たとえばカナダやオーストラリアなどの先進国のなかにも利上げペースをスローダウンしようという動きも出ており、外堀が埋まりつつあるともいえます」

 

――2022年10月下旬ごろから利上げのペースダウンが期待されて、株価が少し上がってきましたよね。

 

荒磯「その後の12月のFOMCでは利上げ幅が縮小されました。ただし、利上げの到達点はもう少し先というメッセージを出しており、政策転換となるとまだ予断を許さない状況です」

利上げはいつまで続くのか

――市場の注目は「利上げがいつまで続くか」に集まっていますね。

 

荒磯「はい。利上げは残念ながらもう少し続くと思います。図表3をみてください。

 

あ
[図表3]米国CPI前年比と市場予想過去の実績や分析は、将来の成果などを示唆・保証するものではありません。
期間:市場予想は2006年1月~2022年8月、米国CPI(前年比)は2006年1月~2022年9月
出所:ブルームバーグ、AB

 

緑の線がアメリカのCPI前年比です。足元が高く、インフレになっています。

 

青の線が政策金利の市場予想で、右側に行くにしたがって上がっているのがわかります。アメリカの政策当局は自分たちが今後どういう政策金利を決めていくかということに対して予想を公表しています。これがいわゆるドット・プロットと呼ばれるもので、その予想の結果が図表4の紫の点線です。

 

あ
[図表4]今後の政策金利予想過去の実績や分析は、将来の成果などを示唆・保証するものではありません。
期間:市場予想は2006年1月~2022年8月、米国CPI(前年比)は2006年1月~2022年9月
出所:ブルームバーグ、AB

 

ご覧いただくと、22年の年末よりも23年の年末のほうが金利が高いことから、来年に入ってもまだ利上げをする可能性は非常に高いです」

 

――では、金融市場はまだ厳しい状況が続くのでしょうか?

 

荒磯「2023年に何が起きるかというと、昨年にすでにおこなった利上げの効果が遅れてやってきます。これは景気に対して悪材料となります。

 

利上げが終わる見通しが見える、あるいは利上げをする速度が緩やかになってきたというのはよいニュースですが、景気がよくないというのが次の悪材料です。利上げが収まることで株高になっても、『不況下の株高』と呼ばれるものに留まる可能性が高いです」

 

――企業の成長期待から株が買われるという「健全な株高」というわけではないということですね。

 

荒磯「2023年のうちに「健全な株高」まで達するのは難しい状況です」

 

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【ご注意】
※本稿は、「【AB’s Market Tips】 #2 アメリカの利上げ、ここからどうみる?」を参考に、再編集したものです。詳細については当該動画をご覧ください。
本文中の見解はリサーチ、投資助言、売買推奨ではなく、必ずしもアライアンス・バーンスタインポートフォリオ運用チームの見解とは限りません。本文中で言及した資産クラスに関する過去の実績や分析は将来の成果等を示唆・保証するものではありません。
当資料は、2022年11月26日現在の情報等を基にアライアンス・バーンスタイン株式会社が編集した資料であり、いかなる場合も当資料に記載されている情報は、投資助言としてみなされません。当資料は信用できると判断した情報をもとに作成しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。当資料に掲載されている予測、見通し、見解のいずれも実現される保証はありません。また当資料の記載内容、データ等は作成時点のものであり、今後予告なしに変更することがあります。当資料で使用している指数等に係る著作権等の知的財産権、その他一切の権利は、当該指数等の開発元または公表元に帰属します。当資料中の個別の銘柄・企業については、あくまで説明のための例示であり、いかなる個別銘柄の売買等を推奨するものではありません。
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