(※写真はイメージです/PIXTA)

勤めている会社から退職する際に、誓約書を書かされることはあるでしょう。お世話になった会社への最後のご奉公ともいえますので、気持ちよく記載したいところです。しかし、その内容が、自身の再スタートに著しく支障をきたすものならどうでしょう。そこで実際にココナラ法律相談のオンライン無料法律相談サービス「法律Q&A」によせられた質問をもとに、活動を制約する内容の誓約書への記載義務について原悠太弁護士に解説していただきました。

 

(1)書面が存在すること

競業避止義務の存在を裏付ける書面の存在が競業避止の有効性を肯定する1つ目の指標です。

 

退職時の誓約書ももちろんですが、入社時の誓約書や就業規則等にも記載がある場合があるので、よく確認してみてください。

 

退職時の誓約書にサインをしてしまうと、競業避止の有効性が肯定される方向に傾きますので、強い意思をもって拒否するか、どうしても断れない状況であればその状況を録音しておく等して対策することも重要です。

 

逆に会社側からすると、競業避止に関する書面を何らかの形で交わしておくことや、その際は脅迫等の方法を用いず任意でのサインを求めるように心がけることが大切です。

 

(2)競業避止義務の内容に必要性と相当性があること

端的に言えば、会社の利益VS職業選択の自由の場面です。

 

①会社の守るべき利益(必要性)の内容

 

会社の守るべき利益が大きければ、制限の必要性は高いということになり、競業避止も許容されやすくなります。

 

②制限の相当性

 

ア 従業員の地位、代償措置の有無

 

会社の守るべき利益の存在が何であるかということを念頭に、対象従業員に競業避止を課す必要性があるのかどうか、その従業員が代償措置として何らかの見返りを受けているかどうかなども考慮要素のひとつです。

 

無条件に一律全ての従業員に競業避止を課している場合などは相当性を欠く方向に傾きます。

 

イ 競業避止の地域的な限定の有無

 

会社の守るべき利益との関係で、競業避止の範囲は地位的な限定をしないと相当性を欠く方向に傾きます。

 

例えば全国で競業禁止等という制約は相当性を欠きます。

 

ウ 競業避止の期間

 

競業避止の期間も同様で、会社の守るべき利益との関係で、無意味に長期間の制限は相当性を欠くということになります。

 

会社の守るべき利益が何か、他の制限がどうなっているかにもよりますが、概ね1年程度が許容範囲かと思われます。

 

エ 禁止される競業行為の範囲

 

会社の守るべき利益との関係で、禁止される競業行為は限定的でないと相当性は欠く方向に傾きます。

 

例えば、競業他社への転職を一律全て禁止するような記載は相当性を欠きます。

 

このように退職時の競業避止義務契約の有効性が認められてしまうと、退職者にとっては職業選択の自由が制限されてしまうなど、今後の仕事に支障をきたす可能性があります。
会社からご自身にとって不利な内容が記載された契約書の締結を勧められている場合は、サインをする前に弁護士に相談することをおすすめします。

 

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