(※写真はイメージです/PIXTA)

中国人民元がドルの基軸通貨の地位を脅かす可能性は低いといえます。中国はドルの流入が断たれると財政・金融ばかりでなく、モノの生産、流通、消費、投資のすべてが麻痺してしまいます。ジャーナリストの田村秀男氏が著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)で解説します。

二次制裁は絶対に避けたい習近平

■米国の巻き返しと中露金融協調

 

米国バイデン政権のほうは習近平によるプーチン支援をやめさせようと躍起になっています。バイデン大統領は3月18日、習近平国家主席と1時間50分、テレビ会議方式で会談しました。バイデンは習に対し、米国と同盟国が一致して経済制裁を実施、多くの外資系企業がロシアから撤退していると説明したうえで、「ロシアに実質的な支援を行った場合、中国と米中関係が報いを受けるだろう」と警告しました。

 

その前の3月14日にはローマで約7時間もの長きにわたってサリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)が中国共産党外交担当トップの楊潔篪党政治局員と談判しました。中国が制裁で打撃を被っているロシアを支援すれば二次制裁を辞さない考えを明確に伝えたのです。

 

二次制裁は「経済制裁を通じた米国の敵対者への対抗措置法」に基づきます。2017年8月、トランプ大統領(当時)が署名、成立させました。当時はロシア、北朝鮮、イランへの制裁破りが念頭にありましたが、米国によるあらゆる対外制裁への妨害に加担する外国に対し、大統領権限で外国為替、投融資などを通じたドル関連取引を禁じることができます。

 

中国の金融機関が対露金融制裁の抜け穴を提供すると、ロシアの銀行に対するのと同様のドル取引禁止処分を受けかねません。中国の銀行の対外資産の約7割がドル建てであり、二次制裁を受けると信用不安に陥る可能性があります。

 

共産党中央内では動揺があると伝えられますが、習政権は対露協調、対米対抗路線に固執しています。グローバルなドル覇権に対抗するという点で習はプーチンと「同志」なのです。

 

前述したように、ロシア側が中国に求める支援策のうち、最も切実なのは西側の対露金融制裁をかわす手段の提供です。それが中国人民銀行主導の銀行間決済ネットワーク、CIPSというわけです。

 

ロシア側が求めるCIPS利用を拒絶することは、習・プーチン盟約に反することになるばかりでなく、8年間かけて築いてきた中露金融協調に亀裂を入れかねません。そして何よりもそれは、ドル基軸通貨体制に挑戦する習氏の戦略の頓挫を意味するでしょう。

 

これまでどの程度、中露間の人民元決済は進んできたのでしょうか。

 

グラフ2―③でわかるように、ロシアの中国からの輸入決済通貨のシェアは、クリミア併合前の2014年ではドル建て比率が9割を超えていましたが、2021年9月時点では58パーセントに下げました。人民元建て比率は不明ですが、人民元建てがふくまれる「その他」は大幅に拡大しています。

 

ロシアの対中輸出決済のほうは、2014年には99パーセントだったドル建てが、2021年9月には33パーセント弱まで下がり、ゼロに近かったユーロ建てが53パーセント、ルーブル建てが8パーセント弱まで上昇しました。ドル比率は大幅に下がったとはいえ、ドルとユーロでの決済比率は依然として高水準です。

 

出典)田村秀男著『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックス【PLUS】新書)より。
出典)田村秀男著『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックス【PLUS】新書)より。

 

次ページドルの流入が止まると中国は崩壊する

本連載は田村秀男氏の著書『日本経済は再生できるか 「豊かな暮らし」を取り戻す最後の処方箋』(ワニブックスPLUS新書)より一部を抜粋し、再編集したものです。

日本経済は再生できるか

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田村 秀男

ワニブックス

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