問題なのは、2と4のケースです。これらの場合、現時点で加害者は慰謝料等を払う意向がないということになります。
その場合でも、警察に相談し、刑事手続に乗せることができれば、加害者が警察沙汰にはしたくない、前科がつく危険を回避したいと考え、慰謝料等の支払いを申し出てくることもあります。
性犯罪は、密室で行われることも多く、決定的な証拠が残りにくい犯罪ではありますが、被害者の話が重要な証拠となり、警察が動いてくれることもあります。
また、加害者側の弁護士と面談する際のポイントについてお話します。
上記のケースでは、加害者とLINEでやり取りをしているとのことでした。
加害者とのLINEのやりとりについては、加害者の弁護士に見せる必要はありませんが、加害者が自分の依頼した弁護士にLINEのやり取りを見せている可能性は十分に考えられますので、加害者の弁護士から指摘されることもあり得ます。
しかし、性犯罪被害に遭った被害者が、加害者からの報復を恐れて、あえて普通の状態を装ってLINEのやりとりをすることもありうるため、LINEのやりとりがあるからといって直ちに不利には働かない可能性もあります。
また、加害者の弁護士から、こちらの言い分を聞かれることもありますが、必ずしも言い分を伝える必要はありません。
もっとも、弁護士によっては、被害者側の言い分を聞いたうえで、依頼人である加害者に、罪を認めるように働きかけたり、慰謝料の支払いを説得してくれたりすることもありますが、ご自身でそのような見極めをすることは難しく、そのあたりは、こちらも弁護士に依頼し、弁護士から伝えてもらった方がいいかもしれません。
被害者も弁護士をつけるべきか
加害者の弁護士から連絡があった場合、このままご自身で対応するのか、こちらも弁護士に依頼するのか、というのは悩ましいことだと思います。
こちらも弁護士を依頼するメリットは、加害者の弁護士の提案を受けるべきかの判断について法的な観点からアドバイスを受けることができる点、交渉力の点で劣らないようにできることが挙げられます。
もっとも、弁護士に依頼することのメリットは、これらだけでなく、特に性犯罪においては、加害者の弁護士と直接連絡を取ることによる負担を軽減できることが一番のメリットと言えるでしょう。
被害者の方は、加害者の弁護士と話すたびに、事件のことを思い出すことを強いられ、その心身の負担で体調を崩すなど、日常生活にまで支障が出てしまうおそれがあります。
弁護士に依頼することで、そういった支障を一定程度軽減することが期待できます。私自身、被害者も弁護士に依頼した方がよいか、という相談を受けることがよくあります。
私のアドバイスとしては、「加害者の弁護士と連絡を取ること自体が負担に感じるのであれば、ご自身の心身の負担を軽減するために、弁護士に依頼した方がいいと思います。そうでなければ、まずはご自身で加害者の弁護士から話を聞いてから、弁護士に依頼するかどうかを決めてもいいでしょう」とお答えさせいただくことが多いです。
他方で、弁護士に依頼することのデメリットとしては、弁護士を探す手間がかかる、弁護士費用がかかる、という点にあります。また、加害者の資力などによっては、弁護士を付けたからといって、慰謝料等の額を必ずしも増額できるというわけではありません。
上記のデメリットを踏まえても、少しでも、心身の負担を軽減したいという方であれば、弁護士を付けていただいた方が良いのではないかと思います。
これらの点も踏まえ、弁護士に依頼した方がよいかご判断いただければと思います。