※画像はイメージです/PIXTA

事業承継や事業再編のため、より自由な経営が可能な株式非公開化が有効なケースもあるでしょう。具体的な株式非公開化の実施方法や注意点などをみていきます。

MBOによる株式非公開化

事業承継や事業再編・コスト削減・敵対的買収対策に用いられる株式非公開化は、『MBO(Management Buy-Out)』によって行われます。MBOは具体的にどのような手法なのでしょうか?

経営陣によって買収する

『経営陣』が自社の株式を買い取り、事業部門や経営権を取得するのがMBOです。実施するときには、まずそれぞれの株主に対して、株式を買い取る交渉を行います。交渉で株式を買い取れない場合に実施するのが『スクイーズアウト』です。少数株主や特定の株主から強制的に株式を取得します。

 

具体的には、複数の株式を1株にまとめる『株式併合』や、株主総会の特別決議で可決されると取得できる『全部取得条件付種類株式』などの手法を活用します。

場合によっては株式公開買付を選択して買収

株式非公開化を行うにあたり、株式公開買付(TOB)によって経営陣が自社株式を取得するケースもあります。TOBは不特定多数の株主へ公告し、株式の買付を勧誘するのが特徴です。TOBは主に上場会社の株式が対象です。通常であれば証券取引所の市場で売買する上場会社の株式を、市場外で取得する手法です。

再上場を行う場合

MBOによる株式非公開化は、事業承継や事業再編などの目的を達成するための手段です。目的を達成した後は、資金調達が必要なタイミングで再び上場を目指す場合もあります。上場を廃止すると、株主の意見に左右されない経営が可能です。その反面、自社内のみで方針を決定できるため、重要な判断が甘くなる可能性があるでしょう。

 

再上場を計画しているなら、上場会社の基準を満たせるよう、上場を廃止した後の経営を計画的に実施するのが重要です。

株式非公開化における注意点

株式非公開化にはコスト削減といったメリットがある一方、注意点もあります。特に資金調達の方法が限定される点や、既存株主の利益への配慮には要注意です。

資金調達が融資などに限られる

上場会社は、株式を発行し投資家に出資を募ることで資金調達できます。この資金調達方法は、株式非公開化を行い上場を廃止すると使えません。そのため金融機関からの融資に頼ることとなります。金融機関から資金調達した場合、返済にあたって利息の負担も必要です。十分な資金調達手段を確保せずに上場を廃止すると、資金繰りが悪化する可能性があります。

既存株主の利益に配慮する

MBOといった手法で既存株主から株式を取得する際には、株主の利益に十分配慮しましょう。自社の経営陣が株式を取得するMBOでは、経営陣と株主の利益が相反します。

 

仮に不当に安い金額で経営陣が株式を取得した場合、本来であれば株主が受け取れるはずの利益を経営陣が受け取っているのではないか、という不透明感が出てきてしまいます。株主の利益が本来より低くなることのないよう、公正な手続きによりMBOを実施しなければいけません。

株式非公開化による影響を理解しよう

上場会社が上場を廃止し、証券取引所の市場で株式を売買できないようにすることを、株式非公開化といいます。上場していると資金調達がしやすくなりますが、経営の方針を決定するときに株主の意向を無視できません。そこで事業承継や事業再編・事務的コスト削減・敵対的買収対策といった目的を達成するために、株式非公開化が利用されます。

 

ただし上場廃止によって資金調達が融資に限られる点や、株主の利益に配慮が必要な点には要注意です。

 

関連記事

 

 

本連載は、税理士法人チェスターが運営する「税理士が教える相続税の知識」内の記事を転載・再編集したものです。専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。

人気記事ランキング

  • デイリー
  • 週間
  • 月間

メルマガ会員登録者の
ご案内

メルマガ会員限定記事をお読みいただける他、新着記事の一覧をメールで配信。カメハメハ倶楽部主催の各種セミナー案内等、知的武装をし、行動するための情報を厳選してお届けします。

メルマガ登録