コロナ禍で増えた職場での精神的不安
産業保健の視点からコロナ禍にある職場を眺めると、リモートワークによる運動面の心配や生活リズムの乱れなどの身体面への影響も懸念されますが、それ以上に深刻なのが精神面への影響です。コミュニケーション不足からくる不安や判断の迷いなど、メンタルケアを必要とする人々が増えてきていることを実感します。
テレワークが中心になったり、シフトで人との接触が減ったりするなか、休憩時間や就業後の交流だけでなく、顔を合わせたほんのひとときの軽い雑談さえもなくなって、社内コミュニケーションがとれなくなっています。特に新入従業員や異動したばかりの従業員など、その場にいれば築けたはずの人間関係がつくれず、先のみえない不安に陥っている人も少なくありません。
ヒントとなるのは「つながり」の再考
メンタルケアに必要なのは人と人とのつながりです。新型コロナウイルス感染症の拡大は、人の接触を問題にするため、このつながりが断絶してしまっています。業務を効率よく進めるための手段としてオンラインによる情報共有は発展してきましたが、コミュニケーションを強めるツールとはいい難いところがありました。オンラインでは、心をつなぐコミュニケーションはできないのでしょうか。
アナログ感覚を引き出すSNSの活用法
デジタルツールを活用したオンラインコミュニケーションは、同じ場所にいるリアルでのコミュニケーションに取って代わる手段にはなりません。むしろオンラインだからこその利点を生かした「新しいつながり」に着目し、穴埋めではなく一歩先行くコミュニケーション法の開発と考えていくべきです。
たとえば、デジタルコミュニケーションの特徴ともいえる「シェア」があります。事務連絡などで情報を同じにするという共有ではなく、発信者の発見や疑問など、ちょっとした気持ちを一緒にする感情の共有です。ソーシャルネットワークサービス(SNS)には、賛同(いいね)の意をスタンプなどで表明したり、投稿を転送したりする機能があり、人から人へ、気持ちが拡散されていくしくみがあります。
SNSが拡散させているのは「つながり」です。もちろん投稿の内容も広めていますが、人々が共有しながら感じているのは、同じように生きている人の存在なのです。
リモートワークで運動不足を解消するため1日の歩数を記録する健康管理を行うとしましょう。各自でただ歩いた記録をつけていくだけだと長続きせず、義務感ばかり募ります。これを、職場単位で歩数を競いって社内SNSでチャレンジの状況をシェアしたり、いいねを押しあうイベントにしてみたらどうでしょう。
矢嶋 収
株式会社WellGo
営業戦略部
マーケティング責任者 兼 セールス