(※写真はイメージです/PIXTA)

アメリカではイーロン・マスクをはじめとする大起業家が星の数ほど出ています。なぜ日本では彼らのような起業家が生まれないのでしょうか? みていきます。

日本で新しいベンチャーがあまり伸びないワケ

日本のほうは、前にも言ったようにアメリカが40年上がっている間、30年下がっていたので、まずはこれまで下がっていたバリュー銘柄はここでつなぎとして買われる。その後、日本のDX革命を牽引する、新しい銘柄が出てくる。

 

しかし古い名前ではだめ。いつまでたってもNECや富士通と言っていたのではだめです。富士通が全部解体されて、新しい富士通が生まれるならいいけれど、それは無理です。たとえばトヨタにしても、EVに完全に変えられません。優れた内燃機関の技術で勝ち抜いてきたというこれまでのしがらみがあるからです。テスラみたいにゼロからEVしかやっていない企業には勝てない。だから、新しい企業でDX関連を引っ張るような銘柄が出てくるかどうかです。

 

でも、日本は新しいベンチャーがそんなに伸びていません。ケインズが資本主義の原動力として大切にしていた人々の挑戦する心であるアニマルスピリットが落ちています。戦後の日本には、本田技研の本田宗一郎とかソニーの盛田昭夫とか、新しい会社を起こして大きくしていこうという意欲にあふれた、日本経済を牽引するようなヒーローがたくさんいました。それがいまの日本では、そういうアグレッシブな人材がほとんどいなくなった。

 

アメリカはそれこそ星の数ほども出ています。ペイパルの創業者でシリコンバレーで大きな影響力を持っているペイパルマフィアのピーター・ティールを始め、アマゾンのジェフ・ベゾス、最近社名をメタに変えたフェイスブックのマーク・ザッカーバーグなど多士済々です。テスラのイーロン・マスクも最初はピーター・ティールと組んでいました。

 

彼らの成功パターンは、自分の会社を上場して時価総額を巨大にして、本人も大富豪になる。日本では出る杭は必ず打たれますから、こういう破天荒な起業家はまず出てきません。そういう異端児を許容する土壌がないからです。

 

また、IPOマーケットがあまり育っていないというのも大きな要因でしょう。エンジェル投資家が少ないのも1つの大きな要因です。アメリカでは大金持ちになった起業家たちが、みんなエンジェル投資家になる。

 

日本のエンジェル投資家の1番の代表は孫正義さんです。やはりお金を儲けている人が次世代の人材を育ててくれないことには、ベンチャー企業が次々に出てくる好循環は生まれてこない。だから、ソフトバンクの孫正義みたいな、リスクを取ってどーんとお金を入れてくれる資本家(キャピタリスト)が必要です。

 

ただ日本の場合、そういう人材の出現を期待しているだけではだめかもしれない。なので、政府がベンチャー企業を支援しようという流れが出てきています。岸田政権のデジタル田園都市国家構想もそういう流れの一環ですし、人への投資というのはそれです。つまり、人材をもう少し伸ばしていこうという考え方です。

 

日本は政府や大企業がベンチャー起業家を育てる方向に舵を切ろうとしている。だから、日本政府はどんどんベンチャー起業家を支援する。この波に乗って、日本はアメリカのシリコンバレーに比べればかなりスケールは小さいけれど起業家が出てきてIPOマーケットで価値を高めていく仕組みがようやくできるようになっていくと思います。

 

この2022年は、いままでとは違う、大転換期の年になるでしょう。それを見誤ると、幕末の徳川幕府のほうについた人のように全滅です。薩長についたほうは明治維新で権力や富を握る。奥羽越列藩同盟にならないようにしてください。

 

 

菅下 清廣

スガシタパートナーズ株式会社

代表取締役社長

 

本記事は、菅下清氏の著書『史上最強の資産インフレ相場で大化けする日本株を買え! 大円安・インフレで1000兆円が動き出す』(徳間書店)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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