103万円の壁、130万円の壁…超えてはいけない壁はどれ?働く主婦が「損しない年収」【税理士が解説】

103万円の壁、130万円の壁…超えてはいけない壁はどれ?働く主婦が「損しない年収」【税理士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

所得税に関わる「103万円の壁」や、社会保険料に関わる「130万円の壁」…。働く主婦(主夫)には、年収に応じた「壁」がいくつもあります。それぞれの壁を超えたらどんな影響が生じるのか。結局のところ、年収いくらまでなら大丈夫なのか。板山翔税理士が解説します。

 

――103万円の壁とか130万円の壁とか色んな壁があるみたいですが、結局どの壁を超えたらいけないのですか?

 

板山翔税理士:「一番大きな壁は社会保険の130万円の壁(101人以上の企業の場合は106万円の壁)で、その他の壁はそれほど大きな壁ではありません。」

結論:超えない方がいいのは「130万円の壁」のみ

 

妻が夫の扶養に入っているとき、妻の年収が103万円を超えると、夫の配偶者控除が受けられなくなって夫の税金が増えるため、「103万円の壁」なんて言い方をされてきましたよね。

 

しかし、平成29年度の税制改正で配偶者特別控除の適用範囲が広がったため、実は103万円の壁はそれほど大きな壁ではなくなり、代わりに「150万円の壁」や「201万円の壁」と呼ばれる新たな壁が誕生しました。

 

また、税金ではなく社会保険の方に目を向けると、妻の年収が130万円以上になれば、妻自身が社会保険に入って社会保険料を負担しないといけなくなるため、こちらは「130万円の壁」と呼ばれています。

 

こちらも令和2年の改正年金法によって、101人以上の企業であれば月額賃金8.8万円以上(年収106万円程度)で社会保険の加入が必須となったため、「106万円の壁」と呼ばれる新たな壁が誕生しています。

 

他にも、年収が93~100万円を超えると住民税がかかる「100万円の壁」なんかもあり、壁ばっかりで結局どの壁を超えたらいけないの?って思いますよね。

 

結論から言えば、妻が超えない方がいいのは社会保険の壁である130万円の壁(101人以上の企業の場合は106万円)のみで、その他の壁はそれほど大きな壁ではありません。

 

もちろん例外もありますので、それはなぜなのか?もきちんと理解した上で判断してもらうために、それぞれの壁、全部で6つの壁の意味について解説していきます。

6種類ある「~万円の壁」…超えたらどうなる?

■100万円の壁(住民税の壁)

先ほど簡単に説明しましたが、妻の年収が93~100万円を超えると、妻自身に住民税がかかるのが「100万円の壁」です。

 

93万円~100万円と幅があるのは、自治体によって非課税限度額が違うからです。

 

住民税は全員同じ金額を支払う均等割と、所得に応じて支払う所得割(10%)の2種類があります。筆者が住んでいる京都市で見てみると、住民税の均等割は5,600円と少額で、他の自治体でも大差はありません。

 

また、所得割も100万円を超えた部分の10%ですので、少し超えたぐらいでは大した金額にはなりません。例えば年収が110万円であれば、所得割は(110万円-100万円)×10%で1万円程度です(※実際の計算式はもう少し複雑ですが、簡略化して説明しています)。

 

壁をほんの少し超えただけで納税額が一気に大きくなるわけではありませんので、壁を気にして仕事量を抑えるようなことまでする必要はないでしょう。

 

ただし、単身世帯や夫の収入がない人で、住民税非課税世帯だけが受けられる国民健康保険料や高額療養費の軽減などの優遇措置を受けている人は、この壁を超えると優遇措置が受けられなくなるので要注意です。

 

■103万円の壁(所得税の壁)

妻の年収が103万円を超えると、妻自身に所得税がかかるのが「103万円の壁」です。

 

所得税は103万円を超えた部分の5%ですので、例えば年収が110万円であれば、所得税は(110万円-103万円)×5%で3,500円程度です(※所得税率は所得によって5%~45%と大きく変化しますが、年収300万円以下であればまず5%の範囲内です)。

 

住民税と同じく、実際の計算式はもう少し複雑ですし、生命保険料控除などの各種所得控除によって所得税が0円になるケースもあります。

 

いずれにせよ、こちらも100万円の壁と同様、壁をほんの少し超えただけで納税額が一気に大きくなるわけではありません。

 

昔は妻の年収が103万円を超えると、夫の配偶者控除38万円が受けられなくなるため、103万円の壁は大きな壁でした。

 

しかし、今は妻の年収が150万円以下であれば、夫は配偶者特別控除38万円が受けられるため、配偶者控除38万円と差はなくなっています(※夫の年収が900万円を超える場合、配偶者控除も配偶者特別控除も金額が減少し、1,000万円を超えると控除できなくなります)。

 

ただし、妻ではなく息子や親の場合は、年収が103万円を超えると扶養控除38万円などが受けられなくなるため、103万円の壁は未だに高い壁であることに注意してください。

 

■130万円の壁(社会保険の壁)

妻が年収130万円以上(又は夫の年収の半分以上)になると、妻自身が社会保険に加入しないといけなくなるのが「130万円の壁」です。

 

社会保険料は半分会社が負担してくれるとはいえ、自己負担分だけでも給与の約14%~15%にもなるため、現状はこの130万円の壁が最も大きな壁と言えるでしょう。

 

単純計算で年収130万円の15%となると195,000円もの社会保険料が給与から天引きされることになります(※税金と違って130万円を超えた部分の約15%ではなく、毎月の給与〔社会保険上の標準報酬月額〕の約15%です)。

 

社会保険料控除が受けられるため、税金の額は数万円下がりますが、それでも手取りは15万円以上少なくなってしまいます。

 

ちなみに、年収153万円ぐらいあれば、社会保険料と税金を差し引いたあとの手取りが、年収129.9万円の人と同じぐらいになります(※筆者が簡易シミュレーションした結果ですので、計算条件を変えれば多少結果も変動します)。

 

したがって、年収130万円~152万円の間の人より、年収129.9万円で抑えておいた人の方が、手取りが多くなるということです。

 

なお、社会保険の年収130万円以上の判定は、1月~12月の収入で判定するのではなく、年間の見込み収入額で判定しますので、実際は年収129.9万円で抑えるような調整はできません。

 

年の途中でも給与月額が108,334円以上になった場合など、その時点から1年間の見込み収入額が130万円以上になれば、加入対象になることもありますのでご注意ください(※妻が個人事業主の場合、社会保険の扶養の判定上の年収は、「年収=売上高ー売上原価」として判定します。売上高ではなく、残った利益でもなく、「売上高ー売上原価」が130万円以上になるかどうかに気を付けましょう)。

 

■106万円の壁(101人以上の企業の社会保険の壁)

2022年10月から、従業員数101人以上の企業では、月額賃金が8.8万円以上、週の労働時間が20時間以上などの要件を満たした時点で社会保険の加入対象になってしまいます。

 

月額賃金8.8万円は年収で言えば105.6万円となるため、これが「106万円の壁」と呼ばれており、こういった企業にお勤めの場合は130万円ではなく106万円の壁の方に注意してください。

 

■150万円の壁、201万円の壁(配偶者特別控除の壁)

夫が受けられる配偶者特別控除の額は、妻の年収が150万円以下であれば38万円ですが、150万円を超えると徐々に減少していき、201万円を超えと0円になります。

 

これが、150万円の壁と201万円の壁です。

 

壁を超えると一気に納税額が増えるわけではなく、むしろそうならないように控除額が徐々に減少するように工夫されているため、あまり気にする必要はないでしょう。

まとめ:130万円の壁以外はちょっと超えても大差なし

全部で6つの壁の説明は以上です。

 

社会保険の壁である130万円の壁(101人以上の企業の場合は106万円)以外は、壁というほど超えた瞬間一気に税額が増えるものではないことがおわかりいただけたでしょうか?

 

それぞれの壁の意味を一つ一つ覚える必要はありませんので、この文章を保存しておいて、気になったときに見返せるようにしておいてください。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。

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