(※写真はイメージです/PIXTA)

連鎖倒産を防ぐための制度「経営セーフティ共済」について、板山翔税理士が解説します。

 

 

――利益が出そうで納税額も増えそうなのですが、何か納税額を下げる方法はありますか?

 

板山翔税理士:「決算月までに経営セーフティ共済の掛金1年分最大240万円(月20万円×12ヵ月)を前納すれば全額当期の経費にできるため、納税額を下げることができます。ただし、将来掛金を解約手当金として受け取るときは全額収入計上されるため、その年度は納税額が増えます。」

経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは?

経営セーフティ共済(倒産防止共済)とは、取引先が倒産して売掛金などの回収が困難になったときに資金を借入れできる、連鎖倒産を防ぐための制度です。小規模企業共済と同じく、国の機関である中小機構が運営しています。

 

毎月掛金(上限20万円)を支払い、取引先が倒産した場合には、無担保・無保証人で掛金の最高10倍(最高8,000万円)までの金額を借入れできます。

 

また、掛金は最高800万円まで支払うことができ、解約した場合は解約手当金として受け取れます(※掛金納付月数が12ヵ月〔1年〕未満であれば、解約手当金は受け取れません。掛金を12ヵ月以上納めていれば掛金の8割以上が戻り、40ヵ月以上納めていれば、掛金全額が戻ります)。

経営セーフティ共済を使った「納税の先延ばし」

掛金が全額経費(法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費)にできるため、利益が大きく出そうな年度に税金対策として始める人も多いです。

 

決算月までに1年分最大240万円(月20万円×12ヵ月)を前納すれば、240万円まるまる経費にできるため、かなり納税額を減らすことができます。

 

ただし、逆に解約した場合には、解約手当金は全額収入として計上され納税額が増えるので、節税というより納税を先延ばしにしているに過ぎません。

「いつでも解約できる」のが経営セーフティ共済の利点

しかし、いつでも解約できるので、退職金の支払いや事業拡大などで臨時出費が多い年に解約手当金を受け取れば、解約した年の税金の増加を防ぐこともできます。

 

このいつでも解約できるという点が、同じく納税の先延ばしの効果がある生命保険などの商品より便利なところです。業績が良い年に掛金を支払って納税額を減らして、解約手当金はいざというときのためにとっておくという使い方ができます。

 

ちなみに小規模企業共済と同じく、毎月の掛金はあとから増減できますし、掛金の一部を一時貸付してもらえる制度もありますので、掛金の支払によってキャッシュが不足するリスクも低いです。「利益が出てキャッシュはあるけどまだ納税はしたくない…。」と思われる方は、加入を検討してみてください。

 

なお、継続して1年以上事業を行っている中小企業者しか加入できませんので、加入したい方は次の経営セーフティ共済ページ(https://www.smrj.go.jp/kyosai/tkyosai/index.html)で加入要件などをご確認ください。

 

 

板山 翔

板山翔税理士事務所 代表、税理士

 

おそらく日本初の「オンライン専門の税理士事務所」の創設者。自社の事業を「税理士業」ではなく、「経営に必要な情報をオンラインで提供する事業」と捉え、経営戦略コンサルタントとしても活動している。従業員5名以下の小さな会社の経営者を中心に、「小さな会社だからこそできる差別化戦略」の立て方や、「短期間で売上アップするためのマーケティング戦略」、「長期的に資産を形成していくための財務戦略」などを教えている。

 

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