後見人を想定外の人物から親族に交代する方法
家庭裁判所へ「後見制度支援信託」または「後見制度支援預金」の制度の申し立てを行うことで、後見人になった弁護士は、不動産を売却するなどして資産を現金化し、その現金を信託銀行などの金融機関に預けます。このようなスキームを受け入れることをあらかじめ家庭裁判所へ告知するなどの手順を踏めば、後見人を弁護士から親族へ交代することができるのです。
弁護士といった第三者の後見人が、親族ほどに本人を保護できるかというと、そうではない事例も多々あります。そのような背景から成立したのが後見制度支援信託と支援預金というスキームです。
このスキームを利用したい場合、家族全員が事前の段取りについて合意している実態があれば選任された弁護士後見人は無視できなくなります。ですから、家族で不動産売却業務のイニシアティブを取りたいのであれば、後見申し立て前から準備をしておく必要があります。また、適切な準備ができていれば後見人の人選もある程度コントロールできるようになります。
協業する3つのメリット
それでは、ここで不動産業者と弁護士が協業する具体的なメリットを整理しておきたいと思います。おもなメリットは、次の3つになります。
メリット① 「価値を付けられなかった不動産に価値を付けることができる」
不動産のなかにはさまざまな法律的障害により、そのままでは買い手が見つからない、つまり価値がゼロになっているものも珍しくありません。たとえば、市場価格が数億円するようなマンションを売りたいという人がいても、所有者がその人の認知症の父親だったり、担保が設定されているなど権利の面で問題がある場合は、不動産業者としてはどうすることもできないのです。
しかし、弁護士と協業することで、そのような障害を取り除いて市場価格と同等の価値の不動産に仕上げることができます。
メリット② 「不動産取引の範囲を広げることができる」
今まで価値を付けられなかった不動産に価値を付けられるようになるということは、取り扱いのできる不動産取引の範囲を広げられるということです。また、協業に慣れてくれば、それまで「商売にならない」と目に入らなかった物件もターゲットとして見つけられるようになるので、さらに取引数を増やすことができます。
メリット③ 「お互いの得意分野に関する相談相手ができる」
これはあくまで繰り返し協業を成功させて人間関係が出来上がってからの話ですが、弁護士はプライベートなことも含めて協業以外の法律に関する相談相手にもなり得ます(顧問契約含む)。また、何度も協業していれば不動産業者ごとの得意分野がわかるので、弁護士のほうから協業の相談をすることもあります。
不動産業者が弁護士と協業するおもなメリットは以上の3つです。
鈴木 洋平
弁護士
LTRコンサルティングパートナーズ
理事