【事例5】ゴネる抵当権者への対抗策「抵当権消滅請求」
- Aさん:B社代表者
- B社:水産物の冷凍食品を販売する会社
- C社:住宅ローン会社(Aさんの自宅マンションの一番抵当権者)
- D社:B社へ水産物を卸している会社(二番抵当権者)
Aさんの自宅マンションの価値は3,000万円です。C社より住宅ローン2500万円の抵当権、D社よりB社に対する売掛金を担保するため極度額5,000万円の根抵当権が設定されていました。
当時のD社への売掛残は1,000万円ほどでしたが、社長は個人保証をしていませんでした。
この状態で経営が悪化したため、Aさんは、D社に対して売却諸経費を引いた400万円弱の支払いをもって根抵当権の抹消に応じるよう交渉しました。しかし、D社はあくまでも全額弁済にこだわって一歩も譲りません。
このままでは自宅マンションの競売もやむなく、そうするとC社の住宅ローンが全額返済できなくなってしまう可能性があります。そこでAさんは、不動産業者に相談に行きました。
ところがその不動産業者は、抵当権関連のエキスパートではありませんでした。そのため、協業相手の弁護士に話をもって行きました。
そしてAさんは、その弁護士を交渉窓口として再びD社と交渉することになりました。何度も何度も足を運び、繰り返し交渉に臨みましたが、D社は頑なに全額返済にこだわり、一向に譲る気がありませんでした。
こうなったら次の手段に出るしかありません。Aさんは弁護士と話し合って、マンションを2800万円で売却することを前提に、C社へ2500万円(全額返済)、仲介手数料約100万円、引っ越しおよび転居先初期費用100万円、弁護士費用100万円という資金計画を組んで、D社に「抵当権消滅請求」をしました。
売却代金が200万円減額となっていますが、これは抵当権消滅請求というイレギュラーな対応のため、買主が金融機関から融資を受けられず現金で取得することになるためやむなくの判断でした。
これに対してD社は、「自社に1円も入らない」とAさんの代理人弁護士を激しく責め立て、当初提案していた400万円で抹消に応じると言い出しました。
しかし、もはや手遅れです。結局D社は何も法的措置をとらず、抵当権は消滅されることになりました。
しかし、それでもD社は抵当権抹消に応じませんでした。そのため、Aさんは抹消登記訴訟を提起。その結果、D社欠席で勝訴となり、無事に自宅マンションを売却することができました。