(※写真はイメージです/PIXTA)

不動産業者がせっかく優良な不動産物件を扱えても、その物件にまつわる複雑な法律トラブルがあると、物件が適正価格で売れず、依頼者の希望に添えないことがあります。そこで、せっかくのビジネスチャンスを失わないため有効なのが、法律の専門家である弁護士との「協業」です。本連載では、弁護士として不動産関係の数々の法律問題を解決してきた実績をもつ鈴木洋平氏が、不動産業者と弁護士の協業について事例を交え解説します。

不動産業者と弁護士による「協業」とは何か

「協業」とは、日本最大級の辞書サービスgoo辞書によると「一連の生産過程で多数の者が計画的、組織的に労働する生産形態」とあります。要するに「力を合わせて働く」「業務提携する」「コラボレーションする」といった意味でとらえておけば間違いありません。

 

しかし、不動産業者と弁護士との協業においては、あくまでお互いがフェア・対等な関係でなければなりません。「一方が仕事の発注者で、一方が受注者」という立ち位置だと、相手から仕事が得られない、またはメリットが少ないといったことが不満となって、次第に殺伐とした関係になっていくからです。

 

一方で、不動産業者と弁護士が同じ顧客の利益を生むことに対して協業すれば、両者が共通の目標に向かって努力することになるので、お互いに協力し合うことができます。

 

とはいえ、弁護士と日常的に協業している不動産業者は非常に少数派です。その大きな理由は、「弁護士と一緒に仕事をすれば多額の費用がかかる」という先入観が影響しています。それゆえ、弁護士と接点をもつことさえ躊躇してしまうのです。

 

しかしながらこれは大きな誤解です。不動産業者との協業に積極的な弁護士は、不動産業者経由の相談料などを無償とすることが多いのです。

 

また、弁護士と聞くと普段接点もないため反射的に及び腰になる人もいますが、協業するフェアで対等な間柄であれば遠慮はいっさい無用です。お互いの専門分野に関しては、気兼ねなく意見を出し合うことがWin-Winの関係構築につながるからです。

 

なお、顧客の利益を最大化するには、不動産業者と弁護士の専門スキルだけでは足りないケースもあります。そのような場合は、どちらかのネットワークを駆使して司法書士や税理士など、その都度最適な専門家とチームを組んで対応することが得策です。

 

「協業」とは、以上のように「顧客」、「不動産業者」、「弁護士」の3者を核として複数の専門家がチームを組み、さまざまな障害のために商品とならなかった不動産に価値を与え、さらにその価値の最大化を目指して活動することをさします。

「協業」しなかったことによる失敗事例

では、協業によってどのような問題を解決できるのかを、失敗事例を基に説明します。

 

・Aさん:自身名義の持ち家で一人暮らし

・Bさん:子ども

 

Aさんは、今後、一人で生活できなくなったときのために老人ホームへの入所を考えていました。そして、その費用は持ち家を売却して捻出しようと思っており、このことはBさんへ伝えていました。

 

ところがAさんは、持ち家の売却前に脳梗塞で倒れて入院し、独居生活ができなくなってしまいました。会話はいちおうできるものの、理解力が低下して同じ発言を繰り返してしまうような状態です。

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不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

不動産業者のための 弁護士との「協業」のすすめ

鈴木 洋平

幻冬舎

相続、担保、借地・借家…… 不動産業者が直面する法律問題は弁護士との「協業」で解決! 不動産取引を成功に導く「協業」のポイントを 8つの成功ストーリーで徹底解説。 不動産業者必読の一冊! 「仕事になりそうな…

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